【Q】ホイルベアリングの交換
投稿者:ライトストーンズ 投稿日:2002/02/05(Tue) 

 返信 毎々、お世話になっております。 また教えていただきたいのですが ホイルベアリングの交換なのですが、この位は自分でと思い、いつも自分でやっています、この件インターネットや練習の井戸端会議でいろいろと工具論や作業論が話されているのですが 結局、 「まっこんなもんかな」で終わっています、 自分でもベアリングの打ち込み位置や方法に不安を感じつつも大体外したベアリングの位置に新しいベアリングを入れ、ベアリングを手で出まわしてみて「回るな」でOKとしています。ですがどうもこのやり方は正しくなさそうだと先の井戸端会議などで感じておりまして ベータのやり方というのがあると確信致しました次第で質問させて頂いております。

 私のマシンは'98テクノですがハブにはベアリングの突き当てというものが無く打ち込む気になるとベアリング一個分おくに行く位深いと言うのはやはり製造加工のしやすさなのでしょうか? 悩み出すときっと2つのベアリングの平行も怪しいだろうなぁーーー、 黒山レーシング発注の内容になりますでしょか? よろしくお願い致します。

【A】永久保存版!正しいホイルベアリングの交換方法

 およそ機械というモノはすべて回転軸受け(ベアリング)で構成されていると言ってもよろしいです。このベアリングのウンチクを始めるととめどもなく長くなるのでヤンピにして、基本的な考えのみ。
 オートバイに使われているベアリングは、エンジンであれフレームであれすべてその固定方法は「締め付け」法です。ベアリングを固定するには一般的に3つの方法があって

1) 少し狭い穴の中に無理矢理打ち込んで固定させる
2) すこすこぎりぎりピッタシの穴の中にスコンと入れて、外周からネジで固定する
3) すこすこぎりぎりピッタシの穴の中にスコンと入れて、外周を接着剤で固定する

 外周の固定はこの3つの方法のどれかでよろしいが、内軸を差しこんでの固定となると 1)の逆で少し大きな軸をベアリング内径に無理矢理差し込んで固定するしか方法はありません。こと2輪車のベアリングはエンジンもフレームもすべて

1) 少し狭い穴の中に無理矢理打ち込んで固定させる

でして、だからこそ「ベアリングを打ち込む!」という言葉が存在するのです。

 でも、実際には「打ち込む」ことをしてベアリングを入れているのはフレーム周りだけでして、一番精度の大切なエンジンのベアリングは打ち込まずに「スコンと差し入れる」でBeta Motorは組み上げています。およそすべての金属は熱を加えると膨張しますから、クランクケースを、Beta Motorは工業用のオーブン、私達零細企業は工業用ドライヤーで温め、ベアリング穴を熱膨張で広げておいてベアリングをスコンっと落とし入れて、後は自然冷却でその広がった穴が収縮してベアリングを締め付け固定する方法です。
 もし皆様が、どこぞのバイクショップなんかでこのクランクケースベアリングを「叩いて」とか「プレスで」とかで入れているのを見たら、遊びには入ってもいいけど「エンジン組み立て」はやってもらわない方が賢明です。

 くるくる回るベアリングは精度が出ているし、それを狭いところに入れて外周から圧力をかけて固定するのだったら.、その中に入っているベアリングは締め付けられて動きが「悪くなるのとちがう」のとお考えのアナタは偉い!。その通りでして、メーカーはだからこそ、始めからその締め付け「縮み率」を計算して、始めからガタのあるベアリングを使っています。
 ガタのあるベアリングを狭いところに入れる。外周から締め付けられてそのガタがなくなり、まったくガタのない状態になる。この事をメーカーは最初から計算して、穴の外径とベアリングの種類を選んでいるのです。このベアリングのガタの寸法は世界規格で

ガタなし/P2ーP4ーP5ーP6・・C2ーCMーCN(標準)-C3-C4-C5/ゆるゆる

 と決められていまして、一番ガタのあるC5ベアリングなんか「これ使い古しとちがうの?」というくらいにガタガタでして、ことバイクのエンジンだったらベアリング自体の熱膨張も計算してすべて50からビックバイクまで「C3」が使われています。

 さてここで問題のホイルベアリングですが、これはエンジンのベアリングに比べてはるかに回転スピードも遅いしけっこういい加減な取り扱いで構いません。ステアリングとかリンクのベアリングは、一生「一周」することなくせいぜい半周です。ホイルもステアリングのベアリングもすべてすばり「打ち込み」ます。
 だから規格も標準のCNですが、標準のCNはベアリングに書いてありません。C3とか何も書いていないベアリングはすべて標準のCNです。CN表示は一般的にしません。他にU1とかAとかUとか書いてありますが、NTNベアリングだと、U1はユーザ番号で、Aは製造年月日、Uは工場番号の表示でがたサイズとは関係ありません。

< 私のマシンは'98テクノですがハブにはベアリングの突き当てというものが無く打ち込む気になるとベアリング一個分おくに行く位深いと言うのはやはり製造加工のしやすさなのでしょうか?>

 は前後共に右側のベアリングの事を言っているのだと思います。「ハブにはベアリングの突き当て」というのがあります。それはディスク板側、Betaだと前後共に左側に計算された穴深さ位置に必ずあります。だってこれがないと「ディスクブレーキの左右のブレーキパッドの真ん中に、ホイルについているディスク板がいかない」でしょうが。

 Betaは'01年モデルまではテクノからRev-3までホイルベアリングの打ち込みというか位置決めは同じ方法です。

1) 正しくは「ベアリングプーラー」という特殊工具を使ってベアリングを外に引っ張り出さないといけませんが、ホイルベアリングはホコリや水まみれになりますから、3ヶ月で交換するという「消耗品」と考えて長い鉄棒かなにかで内側から外側に強引にたたき出す方法をとります。

2) まず、一番外についているアルミのカラーをスピンドル穴から棒を差し込み外へ打ち出します。'99年からのフロント側はシャフトが太くなった分、これがうすくなっていますから細心の注意が必要です。で、このうち抜いた左右のアルミのカラーは左右の長さが違いますから、キチンと仕分けしておきましょう。間違えるとまた打ち出してやらないとならず、叩くところがうすいアルミ部分だから変形しやすいから注意が肝要。

3) 次に中をのぞくと左右のベアリングの間に「ディスタンスカラー」という長いパイプが入っています。このディスタンスカラーは中空の中でベアリングに左右から押されて固定されているだけです。で、これを同じ棒で左右どちらでもいいですから、ベアリングをテコとしてディスタンスカラーの根本を外側にこじってやります。これで、中をのぞくとベアリングとディスタンスカラーの間に隙間が出来たはずです。この隙間を反対側から棒を差し込んで、この隙間のベアリング部分を叩いて外に打ち出します。

4) 少しベアリングを叩くとディスタンスカラーとの隙間がユルユルになりますから、あとはベアリングの同じ部分のみを叩かずにクルクル位置を変えながら叩き出してください。そうしないと、穴の径が変形したり大きくなったりします。

5) 次はすべてを掃除して新しいベアリングの組み付けです。

6) 先に説明しておきますが、ホイルベアリングはゴミや水を防ぐために両面にふたがしてあります。そのふたの色でこれを規格的に仕分けしますと

茶色・・LLU 合成ゴム製完全密閉
黒色・・LLB 合成ゴム製少し隙間あり
鉄 ・・ZZ  鉄製少し隙間あり   
           
 LLBとLLUの合成ゴムはニトルゴムで100度までは大丈夫でして、これにAがつくとアクリルゴムで例えばLLUAやLLBAは150度まで大丈夫。だからホイルベアリングはLLUで十分です。

 茶色のLLUは左右のふたが密閉式で完全にゴミや水をシャッタアウトしていますが、その分、ベアリング自体の動きは悪いです。黒色のLLBはその反対で少しだけすき間があいていて完全にゴミや水をシャッタアウトしていませんが、その分、ベアリング自体の動きはふたも何もないベアリングと同じ動きをします。当然、完全密閉式のLLUタイプは、半密閉式のLLBの倍の値段がします。

 Beta Motorは'01年まではずっとこのホイルベアリングには、回転性とコストとそんなにはゴミは入らないだろうとの考えで「6004LLB」密閉式を使っていましたが、やはり「錆が出て動きが悪くなる」ということから、'02年Rev-3からは「6004LLU」完全密閉式ベアリングに変えています。

7) で何が言いたいかというと、打ち込み作業の時にこのゴムのふたを「誤って打って傷を付けたり少しめくらせたりしなさんなよ!」ちゅう事。せっかくのふたを台無しにしてはいけません。

8) ホイルを必ず水平にして置いてください。これが新品ベアリングを正しく平行に間違いなく打ち込む基本条件です。古タイヤかなにかの上に置くのも方法です。私達の仲間は、タイヤ交換の時にも使えますから15センチの角材を50センチくらいの長さで四角に組んでわくを作り、それを使っています。

9) 一番大切なことですが、一番最初に打ち込むベアリングは必ず前も後ろもディスク板のついた方の側のベアリングを打ち込むことです。Betaでいうなら、前も後ろも「左側」です。この部分は、一番奥の突き当たりまで打ち込むとホイルを組んだときにピッタシにブレーキパッドの真ん中にディスク板がくるように設計されています。ですから、このベアリングは必ず行き当たりまで打ち込んでください。

10) 穴の上にベアリングを置いて、そのベアリングよりも大きな径の平ぺったい丸い鉄の固まりを乗せて叩きます。よく見るのがベアリングと同じ径のソケットを使っていることです。これだと少しずれると先に書いたとおり、せっかくのゴムをたたいてしまい、ゴムを押し込んだりめくれたりさせますから絶対にやらないこと。それがないなら、それを見つけるまではやらない方がいいのです。トライアルテクニックはどうにもこだわりようがない才能でも、メカニックの道具にだけでもこだわりを見せてくださいね。

11) ひと叩きしたら必ず横からベアリングが平行に正しく入っているかどうか確認しながら.作業をして下さい。根性を見せて一気にガンガン叩いてやるのはおやめになって、その根性はステアケースや飛び降りを前にしたときに見せて下さいね。ホイルハブと平行になっていなかったら、その一番高いところを叩くを繰り返してやりましょう。で、ハブのつらまで打ち込みました。'01年までのBetaはここからさらに穴の中にベアリングは入ります。

12) ハブ穴径にギリギリに入るソケットを捜すか、作るかして、この先は突き当たりまで打ち込みます。太い棒か何かで外周を順番に叩いているひとがいますが、これも「それがないなら、それを見つけるまではやらない方がいい」の言葉しかありません。実戦でやむを得ずやるならまだしも、ガレージでやるときにはもう一度言っておきます「道具をそろえる/こだわりをみせる」にして下さいね。奥さんにもお子さんにも見放され、トライアルテクニックも行き詰まり、最後の意地こだわりはメカニックで男道をみせましょう。

13) このベアリングが一番奥まで届いたら、今度はホイルを反対にして反対側を打ち込みます。まずディスタンスカラーを差し込み次にさっきと同じ要領で反対側もベアリングを打ち込むのですがこっち側は「打ち込みすぎ」てはいけません。最後の突き当たりまで打ち込むと、せっかくディスク板がブレーキパッドの真ん中に来るように位置決めしたベアリングがディスタンスカラーで押されて向こうへ行き位置が変わってしまうからです。

 これを防止するためにBetaの後ろホイルハブには、左側だけ打ち込んだベアリングの位置を固定するために「サークリップ」が入っているのです。前にはこのサークリップは入っていませんからより注意して下さいね。

14) 反対側のベアリングはディスタンスカラーと近くなったら、あなたのアクセルワークと同じくより慎重さが必要です。少し打ち込んではディスタンスカラーとの距離を指を入れて計り、ディスタンスカラーと当たり先に打ち込んだ反対側のベアリングもクルクル供回りで軽く回る位置で打ち込むのをやめます。打ち込みすぎると、この回転が重くなります。こうなるとまた一からやり直しですから、最高レベルの慎重さが必要です。

 鉄棒で叩いていると、この時に叩いた場所しか当たらずに、アナタの言う「左右のベアリングが平行かどうか不安」になるのですよ。

15)つまり、ブレーキ板側は奥の行き止まりまで打ち込む。反対側はディスタンスカラーをいれてそれに軽く当たるまででやめる、です。あとは、一番始めに外したアルミのカラーを左右間違えないように軽く打ち込んで下さい。手のひらで叩いても入るはずです。

16) こうしてホイルハブのベアリングを丁寧に打ち込んでも、後ろのホイルのシャフトはけっこうな力で締め上げますからしばらくすると「ベアリングを打ち込みすぎた」のと同じ状態になって、手で回しても軽くはならなくなります。まあ、実用上は問題ないのですが、'02年からはこうならないようにホイルハブの中のベアリングの取り付け方式を変えてこうなりません。でも、その分

・アルミのカラー
・ベアリング

を取り出すのに「鉄棒で叩いて」は不可能で、専用の特殊工具「ベアリングプーラー」が必要だということを覚えておいてくださいね。根性で叩いても不可能です。

叩け、さすればベアリングは入り扉は開かれイエス様が招き入れられる(ヨハミ7節4)