【Q】ギアシャフトとベアリングのハメ合いについて

こんにちは
01REVのエンジンをばらして シールとベアリングを交換中ですがギアシャフトとベアリングのハメ合いが非常にきつくてバラスにも組むにもシャフトをかなりたたかないと抜き差しできません。クランクはベアリングを暖めて、シャフトを冷却スプレーで冷やしたらすんなりはいるんですがギアの方がうまくいかないので結局、ケースがうまく閉まらなかったりです。これはこういう作りなのでしょうか?シャフトをペーパーで磨いたほうが良いのでしょうかそれともまったく違う方法がありますでしょうか?よろしくお願いいたします。

【A】無理は禁物です。正しく指導を受けましょう!

 エーッ、文面を読む限りでは「空恐ろしいこと」をやっていますねぇ。
文面のあげ足を取る言い方で申し訳ないけど・バラスにも組むにもシャフトをかなりたたかないと・クランクはベアリングを暖めて・シャフトをペーパーで磨いたほうが良い等々。
 でもね、師匠が見ている前で手取り足取り指導を受けないで「クランクケースの開け閉め」を勇気を出してやる場合、まあ、誰でもそうですから心配はないの。私だって、タイヤ交換でタイヤをはずすときに、タイヤレバーを差し込んだ反対側の耳を落とさずに「ギチギチ」言わせながら強引にはずそうとしたり、プライヤーで針金が切れるなんて知らなかったり、まずは千里の道も一歩からですね。

 Rev-3のエンジン/クランクケースに限って言えば、全バラに関しては・フライホイルをはずす・サブフライホイルをはずす・左右のクランクケースを開くの3つの特殊工具があれば、まったく叩く必要なくばらせます。また、組み上げは「工業用ドライヤー」があればこれまたまったく音もなく組み上げることが出来ます。はめ合いを確認する意味で、小さなプラスチックハンマーが1本あれば事足ります。アナタのように、叩く磨くは存在しません。ベアリングはストンっと落とし、クランクシャフトもギアシャフトもすべてストレスなく押し込みます。

 モータースポーツに限らず、エンジンは一番大切な要の心臓です。色白は百難隠すと言いますが、エンジンさえよければサスペンションが悪かろうがどうあろうが、他すべてを隠してしまい良いバイクです。反対に、いくらサスペンションがよかろうがブレーキが鬼効きであろうが、エンジンが悪ければどうしようもありません。

 レースメカニックは、バイクのどの部分の全バラ組立が出来ます。例えば、私の知る範囲でのBeta Motorのレースメカニックは、リカルド/イバノォー/ルーカ/イーバンの4人のイタリア人です。このうち、リカルドとイバノォーはBeta Motorの社員メカニックで、ルーカとイーバンはフリーのメカニックです。で、この4人が例えば前サスペンションをバラして組んだりしても、乗ってみてその差は体感出来ません。つまり「あっ、これは誰々が組んだな」ってのは分からないのです。でもね、エンジンだけは4人が4人共にその組み方に癖があって「あっ、このエンジンは誰が組んだな」ってのが乗ってみて私のレベルでも分かります。のように、エンジンは組む人によって癖が出るのです。

 SUZUKIのワークス時代に経験したことですが、ラインから組上がったばかりのエンジンをベンチで計ると出力は15.8馬力ありました。で、優秀なメカニックが丁寧にバラして組んだだけで16.6馬力出たのです。これを正しくチューニングすると。余裕で20馬力は越えるのです。

 ことエンジンに関しては、ここでアーヤーコーヤ言い始めると、そのウンチクだけで一冊の本が出来上がるくらいのノウハウがあります。アンタって、組むときのことの相談なんだけど、組む以前、例えばクランクケースのベアリングを交換する場合、まずは打ち込んであるベアリングを抜かないと始まりません。アンタって、それはいきなり叩いて抜いているでしょう。ワークスは工業用オーブンでクランクケースを温めます。すると、はめ合いの甘いベアリングは勝手にボトボトっと落ちてくるし、他はゆすると簡単に抜けてきます。これは、少し大きな家庭用オーブンでも代用出来ますし、なければ「工業用ドライヤー」でも代用出来ます。

 ベアリングというものはほとんどの場合、ベアリングの外径よりも少し小さな穴に入れて固定しています。で、このベアリング交換の場合、ベアリングを叩いて抜くと、抜いた後、必ず正規の穴の径よりも少し大きな穴になります。だから、ベアリング交換の場合、入れるときよりも抜くときの方が大切で、打ち込む穴の内径を大きくしないように抜く技が必要なわけ。これをやらないから、組み上げてエンジンをかけてみて、何となく前よりも振動が多くなったりするのです。

 タイヤ交換でも、入れることよりも、はずすときにリムの耳を傷つけないようにしないと空気漏れを起こします。ようは、整備修理はまずははずすときから始まっていると考えてください。

>・シールとベアリングを交換中ですがギアシャフトとベアリングのハメ合いが非常にきつくてバラスにも組むにもシャフトをかなりたたかないと抜き差しできません。

この答えは簡単です。アンタは斜めに抜くか打ち込むかしているのです。クランクケースを水平に置いて、真上からタイミングを計って垂直に押し込むと「ストン」って入ります。

>・クランクはベアリングを暖めて、シャフトを冷却スプレーで冷やしたらすんなりはいるんですが

Rev-3のクランクのベアリングって、耐熱グリス封入タイプの「ZZ」型でしょう。回転中はいくらベアリングが暖まってジェリー状になっても、遠心力で外側へ押しつけられるからグリス漏れはないけど、台の上に置いて温めるとその大切なグリスが内側の隙間から漏れてきますよ。やってはならないことです。

>・ギアの方がうまくいかないので  結局、ケースがうまく閉まらなかったりです。これはこういう作りなのでしょうか?

そういう作りではありません。すべて、アナタの組み方が悪いのです。

>・シャフトをペーパーで磨いたほうが良いのでしょうか

ひぇ〜、恐ろしい。絶対にそんなことをやってはダメですよ。ベアリングの中でシャフトが踊ってバランスが狂い、すごい振動が出てきます。

 単なるタイヤ交換も「技術/技」の差が出るように、エンジン全バラ組立は誰にでも出来るとは言わないけど、正しく出来る人について指導を受けながら「技術/技」を身につけるのが一番です。「技術/技」を持っているかいないかの判断は、まずはその人の整備のスペースを見てみて判断しましょう。整理整頓かたづけの出来ていない整備スペースは、その煩雑さ散らかりようが、そのまま整備の能力なり性格なのです。

 それと、いらなくなった廃油置き場はどうか見てみましょう。真っ黒な汚いオイルで周囲がベトベトになった廃油置き場は、その人の性格そのものです。汚いモノほど、きれいに保管する。このことは、どの職人の世界でも当てはまることですけどね。

うまくいかないのはすべては人のせい、うまくいったら自分のせい(身勝手道1則1)



【お礼】

ギアシャフトの件、詳しくありがとうございました。
外したベアリングを暖めてシャフトを当てても入らないので不思議に思っておりました。
あれですね、マジック。 種、コツ?を知ってる人は すんなりできるのに 知らないと いや私はいくらやってもできない。でも、一番小さいベアリングにはいるシャフトは先端部のみ僅かにペーパーをかけていたのでこのまま組んでしまいます。でも 2年間かなり乗ったんですけど 冷間ではベアリングのガタは良くわかりませんでした。
そのレベル(私)なのかもしれません。
まあ 自分のバイクの中身がどうなってるか判ったのは何となくおもしろいですけどね 
本来は 新型に買い換え。でなければ黒山さんにお願いするのが良いのは判っているんですけど、かけられるお金と好奇心の問題で質問という一番,黒山さんの手を煩わせることとなってしまいました。申し訳ありませんでした。でも 本当にありがとうございました。



【コメント】

ブラック団の方針は、子供達にはメカはやらせず、すべてお父さんがやりなさいでした。これは中途半端にメカニックを覚えると、自分で修理するんだから「バイクを壊すことをおそれて思い切った攻めのライディングが出来ない」の考えです。

事実、ワークスライダーは「自分は乗るのが仕事、メカニックは壊れたバイクをなおすのが仕事」と割り切って、危なくなったらバンバン、バイクを放り投げます。バイクを放り投げて壊れたら自分でなおさなければならないのだったら、絶対にああは簡単にはバイクを放り投げないし、投げる限界まで粘りません。

でもね、トライアルの底辺を支えている民間人は「乗ることといじる事の両方」を覚えていった方が、トライアルそのものを長く続けられます。土曜日曜に乗って、月曜から金曜までバイクをいじる。これはパーツ代しかお金もかからないし、1週間トライアルに接していられます。

ぜひぜひ、メカニックを覚えていきましょうね。