【Q】正立Rev3のトップブリッジのフォークの締め付けトルクについて
投稿者:神奈川県の方

いつもお世話になっております。
02Rev3ですが、ブレーキ側のフォークオイルシールがすぐ漏れ始めるので、ブレーキをかけた時によじれる力がかかるのが原因かと考え、トップブリッジその他を締め込みましたが、力余ってか?トップブリッジのフォークの締め付け部ボルト付け根にヒビが入ってしまいました。
適正な締め付けトルクを教えて下さい。

【A】オイル漏れは傷探しから、トップブリッジのフォークの締め付けにはトルクレンチは使いません。

 「ブレーキ側のフォークオイルシールがすぐ漏れ始める」ですが、何でなんでしょうね。漏れ始めると、それはあなた自身がそのオイルシールを交換しているのですか。それとも、トライアルの整備修理を専門としているショップでやってもらっているのですか。いずれにせよ、そのオイル漏れの原因を見極めないと同じ事の繰り返しですし、お貯めになっているわずかな貯金も減ってきてホームレスになる以外にありませんね。

 そのオイル漏れは「ブレーキをかけた時によじれる力がかかるのが原因」ではありません。これは法廷闘争訴訟裁判に持ち込まれても勝訴する自信があります。インナーチューブに見逃しているわずかなひっかかり傷があるのが、経験上、多くの原因です。お酒の入っていないときに、明るい場所でもう一度初心に返って虫眼鏡を手にしてしっかりと見つけてみましょう。

 さて、ご質問の「トルクレンチ」の件ですが、アナタの考えは手に取るように分かります。「力余ってか」ってあるように、自分の締め付ける力具合に自信がないから、測定機械に頼ろうとしているわけ。でもでも、これは大きな間違いであることを知ってくださいね。

 トルクレンチを使って由緒正しく締め上げるのの最低基本条件には3つの原則があります。

1) 締め付けるボルトナットワッシャが正しい状態で正しく取り付けられていること
2) トルクレンチで締め付ける場合、正しくボルトナットに対して垂直に真上から押さえて横直角に締め付けること
3) 締め付ける両方が、必ず最後には密着して固定すること

 今現在の最新鋭のトルクレンチは、方式はどうあれ、希望のトルクの目盛りに数値を合わせ締め込んでいきますと、最後に「カチッ」という音がして腰抜けになり、規定トルクで締まりましたよと教えてくれるものです。これよりももっと性能のいいやつもあるかもしれませんが、私達のようにいち貧乏人整備工にはこれで十分すぎる性能のトルクレンチです。で、3つの原則を以下に説明するね。

1) 締め付けるボルトナットワッシャが正しい状態で正しく取り付けられていること

 これは、締め付けるボルトやナットにゴミがかんでいたりどれかが錆びていたりなめる寸前だったり、また、締めるときに塗りつけるグリスの多い少ないやその種類(モリブデンかテフロンか)によって同じトルクで締めても全然違います。これはトルクレンチを使う上での大原則で、錆びたボルトを錆びたナットで締め込むのにトルクレンチで規定のボルトで締め付けても、少し締めただけで「カチッ」となるのは誰でも分かります。反対にナットもボルトも使いすぎてユルユルで、あげくにグリスたっぷりだと規定値を締め込んでもトルクレンチは「まだまだ」としか反応しませんから、必ず締めすぎます。
 
2) トルクレンチで締め付ける場合、正しくボルトナットに対して垂直に真上から押さえて横直角に締め付けること

 例えば、リアホイルのスピンドルシャフトを24ミリのスパナで締め付ける場合、片手でスパナの端を持ってグッって締め付けますよね。プラグを取り付けるときにも、プラグを取り付けて手で締め込めるところまで締め込んで、あとはプラグレンチで片手でそのレンチを回して締め込みますよね。実は、この締め込み方法だと締め込む力は正しく相手方に伝わっていなくて、多くの場合は少し横斜めに力が逃げていい加減な締め込み方法なのです。でも、この方法でも締めている力が「人間のコンピューター」で締めていますから「この位やろ」と感と経験と度胸で調整しているから問題ありません。でもでも、トルクレンチは「融通がきかない」特殊工具なのです。

 トルクレンチの使い方の基本があります。右利きの人の場合

・締め付けるボルトやナットに対して、ソケットレンチの差し込む部分を真上から左手でしっかりと真下に押さえつける
・で、右手でトルクレンチの端っこを持って正しく真横に回して締め付ける

 とまあ、ようするに工具を正しく取り扱いなさいという単純なことなんですが、これを間違うと正しいトルクでは締まってはくれません。ようは、トルクレンチは正しく取り扱わないと「融通がきかない」特殊工具ということを知っていてね。

3) 締め付ける両方が、必ず最後には密着して固定すること

 これは、同じ締め付けるのでも、トルクレンチが使える部分と使えない部分を見極める必要があるっていうこと。トルクレンチはグッと締めるとカチンッときて「締まりましたよ」って教えてくれる特殊工具です。ようするに、グッと締まる部分にしか使えないということです。分かりやすく極端に言うと、ゴムワッシャを介しているナットやボルトには使えないことは誰でも分かりますよね。ゴムを締め込んでいくわけですから、規定のトルクで締めてもゴムが縮むだけでいくら締めても「カチンッ」ってはきません。まったく同じ事が、アナタがトルクレンチで締めたいと希望している「フロントフォークの取り付け部」にも言えるのです。

 バイクには、面と面を合わせるように締め込まずに、円周を巻き込むように締め込み、最後まで締まらない状態で終わり固定する部分があります。それは

・ハンドルクランプの締め付け
・前タイヤスピンドルシャフトの締め付け
・フロントフォーク左右の締め付け

 の3カ所です。

 この部分は、技術者に言わせるとキチンとしたトルクで締めてくださいって言うかもしれません。でも、現実は、アナタのようにいくらでも締め込めるからどこで止めていいか分からずいくところまでいって、最後には付け根にヒビが入ったり折れてしまったりします。アナタばかりを責めません。ブラック団のお父さんには何人も、力まかせにこの3カ所部分のボルトを締め込みすぎてボルトを折ったり、相手側がちぎれたりしているのです。どのボルトナットでも、力の限り人生のすべてをかけて立ち向かっていいものではありません。

 話しをアナタのご質問に戻します。アナタのご希望する「トップブリッジのフォークの締め付け部ボルト」は、絶対にトルクレンチを使って締め込んではいけません。感と経験と度胸で締め付けてください。アナタは今回、高いか安いかは分かりませんが、少なくとも「この位の力で締め込むとここはヒビが入る」というノウハウを得ました、その代償として「買い換えるか修理する」になりましたが、これは授業料とおあきらめ下さい。

 医者は3人殺さないと本物の医者にはなれないといいますが、腕のいいメカニックになるためには、たくさんの失敗(お釈迦にする)をしないとなれないのもこれまた事実です。トルクレンチなんぞは使わずに、まず始めはすべての部分に感と経験と度胸で締めて勉強を始めて下さいね。
 
 でもでも、トルクレンチを使って正しく締めなくてはいけない部分も存在するのは事実です。Beta Motorのメカニックも私もバイクを組み上げるときにトルクレンチを使う部分はエンジンの以下の4カ所のみです。

1 ガスケットをはさんで締め付ける左右クランクケースのボルト (1.3キロ)
2 フライホイルのナット (13キロ)
3 サブフライホイルのボルト (9キロ)
4 クラッチハウジングとクラッチセンターをまとめて締め付けるナット (7キロ)

 の4カ所です。この締め付けトルクは各メーカーによって違いますから、書いています数値はBeta Motorに限ってと考えて下さいね。

 それ以外、フレーム部分を含めてすべて手と腕と頭の回路の中にある締め付けセンサーで、ようするに勘と経験度胸で締め付けます。特に前後のホイルを締め付けているスピンドルシャフトなんか、中のディスタンスカラーやホイルベアリングのガタなんかで、その場その場の「時価」トルクで締める必要があってここをトルクレンチで締めているやつがいたら「生ぬるいペットボトルの水」を頭からかけてやりましょう。

最近の若けぇ奴らぁよぉ、特殊工具がなきゃバラしも組みも出来ねぇからなぁ (とあるショップの店長の嘆き)