こんにちわ、2サイクルオイルについて教えて下さい。質疑にありました、混合燃料の比率を拝見いたしましたが、文章の中に[良いオイルを使用して80:1]と書いてありますが、ベータテクノに最適なオイルの銘柄を教えて下さい。御願いいたします。
<A>
ガソリンと混合する、いわゆる2サイクルオイルの良し悪しはバイクのメーカー選びと同じくらいに、とても大切な事です。それはバイクの心臓部のエンジンの性能に影響するからですね。これは、こと2サイクルオイルだけに限ったことでなくて、ミッション室に入れるギアオイルもとても大切な事です。でも、ここでは2サイクルオイルに限って話しをすすめていきましょうね。
いわゆる一生慣らし運転の民間人には
1. そのオイルメーカーの能書きで選ぶ
2. 友人や先輩のすすめで選ぶ
3. バイク屋のすすめるオイルを選ぶ
4. 一流国際A級が契約しているメーカーのオイルを選ぶ
の4つしか方法はありません。選ぶという言葉を書きましたが、今現在、それほど多くの2サイクル混合用のオイルメーカーがあります。
1. オイルメーカーの能書きで選ぶ
これは、自分で作った料理は自分にはとてもおいしいのの原理と同じく、自社製品の能書き書を見ると、自分のところのオイルは世界で一番優秀であるとしか書いておりませんですね、ですから、これは始めからパス。
2. 友人や先輩のすすめで選ぶ
民間人の友人や先輩のすすめるオイルも、これまた信用してはいけません。この場合のオイルの良し悪しは、サイレンサーからの煙の出具合や、タールの付き具合や、そのオイルを親指と人差し指につけてネバネバ具合を見たりと、まるで露天商香具師(やし)まがいの判断基準でしかないのです。
でも民間人には、サイレンサーの出口のタールのたまり具合や、煙の出具合で判断するしかないのですが、それは以下の理由で誤りなのです。
この<Q>&<A>で以前に書いたんだけど、ブラック団はカストロールジャパン社の2サイクルオイルのテストを請け負った時期があります。そして、その時に知ったんだけど2サイクルのサイレンサーから出る煙は「煙添加剤」を入れてわざと煙を作っているのです。
その理由は簡単で、4サイクルオイルはオイル窓からあるなしの判断が目で見て出来ますが、2サイクルオイルは混合したかどうかは後からでは目で見て分かりません。エンジンをかけて多少煙が出ていれば、混合したオイルが燃えていると安心出来るのです。ですから、2サイクルオイルは煙がサイレンサーから出なければならないのです。
でこの仕掛けがしてありますから、煙の出が少ないオイルを民間人がガソリンがきれいに燃焼室で燃えていると勘違いして選ぶのは大間違いなのですね。煙が少ないのは、そうなるように「煙少ない添加剤」を多くしているのです。
同じように、サイレンサーの出口のタールのたまりやベチョベチョ具合で選ぶのも、これまた間違いで、ベチョベチョにならないのが売りのメーカーは「そうならない添加剤」を入れているのです。添加剤という言葉を「薬」という言葉に置き換えて考えてもらってもズバリです。
のように2サイクルオイルには、純粋に潤滑のためだけの性能を持たせたいのですが、でも実際にはその筋の業界の基準というものがあって、煙発生率何パーセントの煙添加剤を入れなければならない、ガソリンに入れて強制的に混ぜずに1分以内に自動混合率が何パーセントとか、他、たくさんの規制がかかっており、その中でオイルを作っていっています。だから、民間人が一生慣らし運転のサイレンサーの出口を見て、タールのたまりやベチョベチョだけでオイルのよし悪しを判断するのはいけませんね。
3. バイク屋のすすめるオイルを選ぶ
バイク屋さんのすすめるオイルは、これは最高レベルの高さで絶対に信じてはいけません。これは営業金儲け目的がからんでいます。例えば、販売価格が同じ2,000円のオイルが2つあったとします。でも、A社のオイルはそのお店に1,000円で入ってきており、B社のオイルはそのお店に1,200円で入ってきていたとします。だったら、1,000円で入ってきているA社のオイルを売れば1,000円の儲けだし、1,200円で入ってきているB社のオイルを売れば800円の儲けにしかなりません。私が店長だったら、何も知らない民間人相手に儲け率のいいA社のオイルを絶賛して売るのはして当たり前の常套手段です。
4. 一流国際A級が契約しているメーカーのオイルを選ぶ
一流国際A級ライダーの契約しているオイルも信用してはいけません。これまた、バイク屋さんで売るオイルと同じく、プロフェッショナルのライダーにとって営業金儲けがかかっているからです。これは多分、今までも実際にあることですが、あるモトクロスの国際A級ライダーがB社のオイルメーカーのスポンサーをつけていたとします。民間人は「あっ、あのライダーがB社のオイルを使っているのなら安心だ」と思ってはいけません。実際には、そのB社のオイルを使っていないことがあるのです。
そのカラクリはこう。その国際A級ライダーはB社のオイルよりもA社のオイルの方が性能的にいいと知っていたとします。でも、その国際A級ライダーがB社のオイルメーカーと契約しているのは
・ そのライダーの実力的にみてA社は金銭契約してくれない。だから格の落ちるB社としか金銭契約出来ない。オイルの性能は悪いけど、お金が出るからB社と契約して、オイルはただでもらえるけどB社のは使わずに、こっそりA社のを買ってこっそりそれを使う。たとえA社のオイルを必要分買っても、B社からもらえる契約金でおつりがくる。
・ A社のオイルの方がB社のオイルよりも性能がいいとして、そしてどちらのメーカーも金銭契約してくれるとします。この場合の選択基準として、A社はその良い2サイクルオイルだけしかないけど、B社には性能の落ちる2サイクルオイル以外にも、ブレーキクリーナーや防錆潤滑スプレーやチェーンオイルとかのケミカル製品がたくさんあった場合、迷わずにB社と契約します。
B社の性能の落ちるオイルはもらっても使わずに、A社の良いオイルを必要分買って使う。その変わりに、B社と契約すればブレーキクリーナーや防錆潤滑スプレーやチェーンオイルとかのケミカル製品が豊富に手に入る。こういう図式です。
ではでは、いったいどうやって最高の2サイクルオイルを選べばいいのでしょうか。答えは簡単でして「トライアル教祖の私を信じなさい」ですね。えーっそれって「3.のバイク屋のすすめるオイルを選ぶ」のと同じでないのですけど、まあまあ、話しを聞きなさいって。
● 実際にエンジンをバラしてみる
大きなメーカーは、試作した2サイクルオイルを使いエンジンを回します。そして、そのシリンダーをバラして、使用前と使用後のシリンダーの内径を正確に測定して潤滑性能を測ります。これはもう、ミクロンの世界の話しでして、私のような勘と経験、腕と度胸の町工場の世界の話しではありません。
私達、町のチューニングショップというか工場のレベルでは、エンジンをバラしてその
・クランク室のオイルのたまり具合
・シリンダーのメッキのすり減り具合
・ピストン壁のアルミのすり減り具合
・ピストンリングの摩耗した部分の光具合
・ピストンの頭の部分のカーボンの付き方
・シリンダーヘッドのカーボンの付き方
・エキパイの内部のカーボンの付き方
・チャンバーの内部のカーボンの付き方
・サイレンサーの内部のカーボンの付き方
で、オイルの良し悪しのすべてを判断するしか方法はありません。でも、このうちの
・クランク室のオイルのたまり具合
・ピストンの頭の部分のカーボンの付き方
・シリンダーヘッドのカーボンの付き方
・エキパイの内部のカーボンの付き方
・チャンバーの内部のカーボンの付き方
・サイレンサーの内部のカーボンの付き方
は、すべて乗り方次第でずいぶんと判定基準が違います。つまり、一生慣らし運転の乗り方と、いつでも全開のカッ飛び乗り方とは全然カーボンの付きが違って当たりまえ。だから、この6つはオイルの良し悪しの判定基準にはなりませんね。
オイルの良し悪しの、町のチューニングショップというか工場のレベルの判定基準は
・シリンダーのメッキのすり減り具合
・ピストン壁のアルミのすり減り具合
・ピストンリングの摩耗した部分の光具合
を目で見て、勘と経験と度胸で見極めます。
私の工場、黒山レーシングにはけっこう全国各地からBetaのエンジンが送ってまいりまして、シリンダーのチューニングからエンジン全バラ清掃組立等々のお仕事が舞い込んでいます。で、この時に必ずやることがあって、それはこちらから依頼主に電話をして「あんた、何の2サイクルオイルを使ってんの」を聞くことです。
この事は、どのオイルメーカーにも出来ないすごいノウハウの蓄積になりまして、どのメーカーのオイルを使ったシリンダーは、メッキのすり減り具合はどのレベルってのが一目瞭然。このメーカーの2サイクルオイルはすごくいいとか、何だこのメーカーのオイルはって、エンドユーザーのレベルで分かるのです。
この事は、オイルと金属のすり減り具合を言っていますが、2サイクルオイルの性能はこれだけではありあせん。実際に乗ってみての感触が、例えば
・エンジンブレーキのききはどうか
・ピックアップはどうか
・下はバラバラこないか
・回転の上がり方はどうか
・最高回転まで上げたときに、ストレスなしにまだ上がりそうか
と、たとえ摩耗性能が同じオイルでも、この乗ってみての感触が全然違うのです。
では、いったいどのメーカーのどの2サイクルオイルがBetaにはいいのでしょうか。国際A級に尾西和博選手というのがいまして、尾西選手は自転車トライアルの世界チャンピオンでもあります。関西の選手なんですが、彼はBeta '04年Rev-3に乗っていますして、彼の練習がどんなに凄まじいものか、関西の人なら誰でも知っていますよね。
エンジンをぶん回す乗り方と言うよりも、ステアケースで失敗してお助けがいないもんだから、しょっちゅうバイクを放り投げてアクセルがひっかかりエンジン全開あわや焼き付きというシーンを何度も知っています。だから、'04年のRev-3なんか新車なんだけど、外見はもうけっこうボロボロ。
先日、この尾西君が「エンジンをもう少しパワーアップしてほしい」と私の所に持ち込みました。で、シリンダーを開けてみてビックリ。エンジンをあれだけブン回しているのに、シリンダーのポーラスメッキもピストンの壁も、まるでまだ新車の状態。
で、「おい尾西、お前オイルは何を何対1で使っているんや」と職務質問しますと、ごく普通に「チームリーダーの小谷さんからもらったBPを80:1で使っています」という供述で、具体的な名前は記憶にないそう。で、裏を取るべくすぐに小谷徹の携帯に電話をかけて確認。「おいテツ、お前尾西にBPの2サイクルオイルを渡したやろ、何という品番や」と追求しますと「それは ビストラ シンセティック 2T-R です」との自供にいたりました。
私達のチームのオイルスポンサーも、BPです。ですから、黒山選手も当然、2サイクルオイルは尾西君とまったく同じ ビストラ シンセティック 2T-Rを80:1で使っています。だから、ご質問のあなたも、BPのビストラ シンセティック 2T-Rを80:1で使いなさいと言うと、これは始めの「3.のバイク屋のすすめるオイルを選ぶ」になりますから、BPからスポンサーを受けていますけど、押し売りになるからこれ以上は言いません。でも、BPのビストラ シンセティック 2T-Rを80:1で使ってほしいのは本音です。
何故なら、腕さえあれば、そのBPのオイルで世界ランキング6位までは行けるということです。'99年の世界ランキング2年連続3位の時は、カストロールでした。
公平な立場から正しいオイル選びの鉄則を書きます。
1 産油国のオイルメーカーを選びなさい
2 ガソリンメーカーのオイルを選びなさい
3 最高レベルの2サイクルオイルでなくて、そのひとつ下のレベルの2サイクルオイルを選びなさい
ですね。
1 産油国のオイルメーカーを選びなさい
2 ガソリンメーカーのオイルを選びなさい
の意味は簡単でして、どのオイルでも、基本的に原油から出来ていまして、原油はほとんどをガソリンにして商品化しています。ガソリンにする原油の残りで色々なオイルを作っていると考えて、当たらずも遠からずです。ということは、原油のほとんどは中東から仕入れている現実ですが、やはり自前の原油が自分の国で出てくるのはガソリン作りもオイル作りも歴史がありノウハウがあるって事。
1 産油国のオイルメーカーを選びなさい
になりますと、これはもうアメリカかイギリスかフランスのオイルメーカーしかありません。メイドインジャパンのオイルメーカーは、この考えだと落選になります。
2 ガソリンメーカーのオイルを選びなさい
日本にはガソリンスタンドにその名前がありませんが、ヨーロッパに行きますと
・BP
・エルフ
・モチュール
はオイルメーカーでなくてガソリンメーカーとして存在しています。とにかく、ヨーロッパのどの国に行ってもこの3つのガソリンスタンドはどこにでもある純然たる巨大なガソリンメーカーですね。
自前の産油国では最高レベルのアメリカには、たくさんの大中小のオイル専門のオイルメーカーがありますが、これらすべてはオイル単体専門のメーカーですから、これから言うとすべて落選になります。
3 最高レベルの2サイクルオイルでなくて、そのひとつ下のレベルの2サイクルオイルを選びなさい
例えばBPの2サイクルオイルのラインナップは上から順番に言うと
A ビストラレーシング 2 (最高レベルのレーシングオイル)
B ビストラ
シンセティック 2T-R (レースやスポーツ走行レベルのオイル)
C ビストパワー2 (スポーツ走行レベルのオイル)
D ビストラスーパー2 (スクーター走行レベルのオイル)
の4種類です。
モチュールの2サイクルオイルのラインナップは上から順番に言うと
A 800 レーシング2T (最高レベルのレーシングオイル)
B 600 2T (レースやスポーツ走行レベルのオイル)
C BIO 2T (スポーツ走行レベルのオイル)
D 510 パワールブ 2T (スクーター走行レベルのオイル)
の4種類です。
メカニックのことに関しては私よりもはるかに詳しいのが、工業高校を卒業して何カ所も渡りの整備工として4輪2輪の工場を転々とした経験を持つ、私のすぐ家の近くに念願の自分のトライアルショップを出している「TOOL BOXの青山さん」です。この人のショップでは、2サイクルオイルはモチュールの上から2番目の6002T(500cc1,750円)しか売っていません。
青山君に「なんで最高レベルの800 レーシング2Tを売らないの、そっちの方が単価が高いから儲かるやんか」と言うと、「800はトライアルの回転の上げ型では排気系にカーボンがたまってたまってダメ。ひとつ下の600がトライアルには合っている。それに800をだまし売りしたら、お客さんが来なくなる」でした。
私の場合は、モチュールよりももっともっといい性能であろう、尾西君と黒山選手のシリンダーのメッキで確認済みの「BPビストラ シンセティック2T-R(500cc1,800円)」をぜひぜひ使って頂きたいところです。
最後に誰でも知っているかもしれないけど、 私達の前のオイル契約メーカーのオイル単体のメーカーでは世界最大のカストロールは今は存在しません。同じイギリスのBPに合併吸収されました。
黒山選手のオイルスポンサーはペトロルブインターナショネル(株)です。この会社の名前は少し長ったらしいですが、分かりやすくオイル名で言うと「BP」です。で、BPはブリテッシュペトロールの略でして、ブリテッシュはイギリスのことで、ペトロールはガソリンのこと。今は合併合併でエネオスに名前が変わったけど、以前に日本石油というのがありました。それで言うとBPは、ずばり英国石油ですね。
2004.02.27 追記
この文章を書いて次の日に、ロードレース専門誌のライディングスポーツ誌が届きまして、タイミングよくオイルの話しのことが、あるメーカーのオイル技術者の話しとして載っていました。
抜粋しますと
1. 原油から色々な石油製品に分けることを蒸留や精製と呼ぶが、ガソリンを作る行程の残留物が鉱物油である。
2. この鉱物油をさらに精製し上澄みを取り出します。
3. この上澄みにアルファオレフィンや各種アルコールなどと化学合成したものが化学合成油といいます。
4. 化学合成油のことを英語ではシンセティックオイルといいます。
5. ですから黒山選手の使ってるBP2サイクルオイルは「ビストラ シンセティック 2T-R」ですから、ずばりそのものの名前ですね。
6. 鉱物油の方が安い価格なのは、その製造工程が化学合成油よりも少なくてすむからです。
7. オイルにはおおむねの目安として、純粋なオイル(ベースオイル) 80%と添加剤 20%の割合に分けられます。
つまりですね、私が書いたように
1. オイルは原油からガソリンを作った後に出来る残留物から作ります
2. ちゅう事は、ガソリンメーカーはタダでオイルの原材料を豊富に手に入れることが出来ますよね
3. だから、私が言う「ガソリンメーカーのオイルを選びなさい」は当たりなのです
4. ガソリンメーカーでないオイルメーカーは、その原材料の残留物をガソリンメーカーから買っていることになります
5. その分は、当然オイルの販売価格に上乗せしないと割が合いません
6. ガソリンメーカーのオイルと、その他のオイルメーカーの販売価格が同じなら、どこかで原材料の残留物を買った分を引き落とさないとつじつまが合いません
7. 表現は正しくないですが、添加剤のレベルを下げるとかになります
ことトライアルだけのオイルスポンサーを書いておきますと
BetaMotor IP(イタリア石油) ・・'03年からはTOM(タム)石油
HRC エルフ ・・フランスの石油会社
Montesa レプジョル ・・スペインの石油会社
GASーGAS モチュール ・・フランスの石油会社
というように、すべてガソリンメーカーのオイルですね。
私はかっての栄光時代はSUZUKIに乗っていて、2サイクルオイルはSUZUKI CCIスーパーという、今も売っているオイルを60:1で使っていました。このSUZUKI CCIスーパーはどこ製のオイルでしょうか。これはその入れ物の缶にも書いていますが、その当時は日本石油、今は昭和シェル石油です。
豆腐を作る行程で出来るカスが、おからです。おから料理のお店で、本店が豆腐を作っている会社のおから料理店と、おからを買ってきているおから料理店とでは、どちらがよりおいしいおから料理が出来るかは論議の余地はありませんね。
これはお寿司や魚料理もそう。本店が「網元」というだけで、もうお腹が空きそうです。