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はじめまして、いつも参考にしています。
ところで、最近のバイクは、ほとんどが正立Fホークに変わってしまいましたが、倒立、正立の良い所悪い所を分かる範囲で教えてほしいのですが、宜しくお願いします。

<A>

1. BetaMotorの場合、倒立も正立もどちらも「性能もフロントフォーク単体の重さも」これはまったく同じと考えてください。それと、オイルシール交換とか全バラ清掃組立とかが、正立は簡単で倒立はややこしい(何種類もの特殊工具が必要)という話は、ここでは除外します。

2. '99年テクノまではフロントフォークは正立でした。でも、'00年からRev-3がデビューして、この年のタイプのみ倒立になりました。で、ずっと何年も正立に乗ってきて、いきなり倒立に変わって何が違ったのでしょうか?

A) 倒立はハンドルが切れない

 それはそうで、ハンドルを左右にきってハンドルストッパーに当たるまでフルロックさせた場合、径の太いアウターチューブが上にあるから、その分、ハンドル切れ角は少なくなります。

 ロードやモトクロスは、コーナーではハンドルをきって曲がっていくわけではありません。すべてバイクを倒して曲がっていきます。ですから、ロードとモトクロスにとってハンドルの切れ角とは、バイクのわずかなバランスをとるためにあって、コーナーを曲がるためにあるのではありません。

 トライアルにとって、ハンドルの切れ角は極端に言うと多ければ多いほどいいのです。スタンディングをやってみましょう。この時にハンドルの切れ角が多い場合と少ない場合、どちらがよりスタンディングがやりやすいでしょうか。これは、理屈ウンヌンよりも圧倒的にハンドル切れ角の多い方がやりやすいのです。要するに、ハンドルの切れ角が多いほど、トライアルではバランスが取りやすいのです。

 先に書いたようにロードやモトクロスは、コーナーではハンドルをきって曲がっていくわけではありません。でも、トライアルはコーナー(角)と言わずにターン(曲がる)と言うように、小さな半径でクルクル低速で回る必要があります。バイクを立てた状態でハンドルだけを切ってターンする場合、誰が考えてもハンドル切れ角の多い方が有利です。

 その昔のお父さんとチャンピオン争いをした、今現在スーパーウイング丸山社長の丸山胤保さんの当時のバイクなんか、それこそ本当にハンドルは左右180度近くきれるからビックリした記憶あり。

B) 倒立は竿立ちに強い

 ステアケースやヒルクライムに挑戦して、勢いあまって頂点でバイクがまくれそうになると言うか、竿立ちになって後ろに返りそうになることがあります。この体勢の時、正立だったら確実に後ろにまくれている角度でも、倒立は踏ん張りがききます。

 この理由は簡単でフロントフォークの上と下で「正立は重いものが上にあって下は軽く」「倒立は重いものが下にあって上は軽く」の重量配分だからです。フロントフォークは、前タイヤにくっついて動く部分と、フレームにくっついて動かない部分とに分かれます。

・正立は前タイヤにくっついて動く部分は軽く、フレームにくっついて動かない部分は重い
・倒立は前タイヤにくっついて動く部分は重く、フレームにくっついて動かない部分は軽い

 分かりやすく言うと、同じフロントフォークだとして、前ホイルを鉄とかで重くしてやりウィリーした場合、前に重りをぶら下げているようなものだから後ろにはひっくり返りにくくなります。また、単純にヒルクライムだけを練習するなら、左右のフロントフォークの先っぽのどこかに板状の重い鉛をガムテープで貼り付けてやってみましょう。登りで後ろタイヤに体重をかけても、前が浮かずにグングン登っていきます。

 だから倒立は正立に比べ、左右のフロントフォークの先っぽのどこかに板状の重い鉛をガムテープで貼り付けた状態と同じ上下の重量配分なのです。

C) 倒立は前を振りにくい

 倒立は正立に比べ、左右のフロントフォークの先っぽのどこかに板状の重い鉛をガムテープで貼り付けた状態と同じ事だから、登りは強いけど、平地や下りでは前回りしやすくなるし、それよりも何よりも、前を振るのに重たいのです。

3. 以上、A).B).C)と3点ほど欠点と長所を書きましたが、この3つは好み乗り方の問題であって、両方の致命的な欠点ではありません。では何故、今のトライアルに倒立フロントフォークが採用されなくなったのでしょうか。そして、ロードやモトクロスでは、正立と倒立が半々で今でも使われているのでしょうか。

この理由も簡単な答えなのです。

4. 私達の時代のフロントフォークは、左右の中身は同じものの構造でした。つまり、左右どちら共にスプリングが入っていてダンパー機能も付いているというもの。
でも、BetaMotorが採用しているフロントフォークはパイオリ社製で、左右のフロントフォークの性能というか役割分担が違います。左側はスプリングだけ、右側はダンパー機能だけです。

 極端に言うと、左右ともに同じ性能構造のフロントフォークは、それが出来るか出来ないかは架空の話しとして、片方だけでもフロントフォークを取り付ければフロントフォークの性能が出て役に立ちます。でも、左右の役割分担の違うパイオリ社製のフロントフォークは、必ず左右が対(ペア)で付けないとフロントフォークとして何の役にも立ちません。要するに、左右を必ず2つ同時に付け、そして強く連結してやらないと、正しい性能を発揮しない性能なのです。

 ここで大切な問題が出てきました。それは「強く連結してやらないと」ということです。左右のフロントフォークの性能の同じものは、左右が同じ性能だから前ホイルを軽い締め付けで取り付けても、左右は同じ動きだから性能は発揮します。でも、左右の性能の違うフロントフォークは、左右を強く確実に強く連結して取り付けてやらないと、上下するたびに左右が別々の動きだからガタガタきて具合が悪いのです。

 この事は、正立であろうが倒立であろうが関係なく、左右の性能の違うパイオリ社製のフロントフォークにはすべてに当てはまります。

・左右の性能の違うフロントフォークは「正立であろうが倒立であろうが関係なく」左右の動きを同じにする為のしっかりした頑丈な連結装置(スタビライザ)が必ず必要です。

5. BetaRev-3は'01年からフロントフォークが正立に変わりましたが、その左右を連結しているスタビライザは逆U字の形をしていました。でも、この形は強度的にまだ弱いので'04年から、モンテッサやガスガスと同じ形の真っ平らな形に変更しました。この真っ平らスタビライザは、左右のフロントフォークをガチガチの最強に連結してくれます。

 さてさて、'00年のRev-3の倒立フロントフォークについているスタビライザを見てみましょう。逆U字の形ですが、この上下の長さが長いうえに軽量化のためアルミスタビライザに長穴を大きくあけています。そのスタビライザを単体で持ってねじってみてもグラグラです。これはもう、スタビライザというよりも前フェンダーを取り付けるための、単なるフェンダーステーという方が正しいかもしれません。
 つまり、'00年のRev-3の倒立フロントフォークは、一番大切な左右の連結装置(スタビライザ)がないのと同じなのです。

6. トライアルバイクの場合、倒立フロントフォークを取り付けようとすると、その機構上スペース形状からしてどうしても左右の強固な連結装置(スタビライザ)が取り付けられないのです。これが、トライアルバイクの世界から倒立フロントフォークが姿を消した一番の理由なのです。
 ロードやモトクロスはまだ倒立フロントフォークを使っているバイクもありますが、これはそのバイクの大きさからして、たとえ倒立フロントフォークであっても、頑丈なスタビライザを取り付けるスペースがあるから問題はないのです。

7. もう一度、再確認しておきます。あなたのご質問「倒立、正立の良い所悪い所を分かる範囲で教えてほしい」ですが、これは両刃の剣と同じく「欠点は長所で、長所は欠点」でして、どちらがどうとはまったく言えず、好き嫌いの問題なのです。ただ、BetaMotorが採用しているパイオリ社製フロントフォークは左右の動きが別物の性能ですから、この左右のフロントフォークをしっかり強固に連結してやる装置(スタビライザ)を取り付けることが絶対条件です。
 
 でもトライアルバイクの場合、その車体の小ささからして構造上、倒立フロントフォークは「左右のフロントフォークを強固に連結してやる装置(スタビライザ)を取り付けること」が設計上難しいのです。倒立フロントフォークが良い悪いではなくて、トライアルバイクに倒立フロントフォークを取り付けて、その性能を100%発揮させることが車体構造技術的に困難だからなのです。だから、トライアルバイクに倒立フロントフォークは採用されなくなったのです。