クロヤマチューニングの03Rev3に乗っています。最近スプリング側からオイルが漏れて出しています。オイルシールを交換したいのですが、油面とかオイルシールもノーマルと違うのでしょうか?あとフォークオイルのオススメや粘度もお聞きしたいのですが?
よろしくお願いします。
<A>
イタリア製BetaMotor社のトライアルバイクは、当然のごとくメイドインITALYです。
バイクは多くの部品の集合体でして、ほとんどの部品は工業国である自国北イタリアで製作調達するか、他の国の部品メーカーから調達する場合でも流通コストの安いEC(ヨーロッパ共同体)諸国から輸入しています。
でもRev-3の場合、キャブレターとあなたのご指摘の前サスペンションオイルシールのみ、メイドインJAPAN製なのです。キャブレターはミクニ製で、オイルシールはNOK(日本オイルシール工業)製です。エンジン本体に付いているすべてのオイルシールはイタリア製なのに、前サスペンションのオイルシールだけは日本製です。これには大きな理由があるのです。
<何故、日本製オイルシールなのか>
オイルシールというものは、締め付けをきつく設計すればオイルは漏れにくくなるかわりに動きは渋くなります。反対に締め付けを甘くすればオイルは漏れやすくなりますが動きはよくなります。そして、その中間値の設計も可能です。
BetaMotor社の前サスペンションのオイルシールの考え方は、オイル漏れよりも動き最優先の考え方をしています。漏れたら交換すればいい、の考え方です。
前サスペンション自体はイタリアパイオリ社製で、パイオリ社は当然純正部品としてオイルシールを出しておりますが、オイルシールそのものはパイオリ自社製ではありません。イタリアのオイルシールメーカーのものです。でもこのサイズ(外径50内径38厚さ8)は、世界中のオイルシールメーカーも作っていましてたくさんあるのです。
同じサイズのオイルシールは、すべて使用感が同じではありません。ゴムの材質もあるでしょうし、締め付け設計の甘いきついもあります。で、色々なオイルシールメーカーの前サスペンション用オイルシールをテストした結果、BetaMotorの思想と一致したオイルシールがNOK(日本オイルシール工業)製という次第。
パイオリ純正のオイルシールは、自然オイル漏れがほとんどないかわりに、動きがとても渋くなります。我が家にはこのパイオリ製38径オイルシールがありまして、以前、ストレートオン誌編集部の泥さんの「動きが悪くなってもオイルが漏れない方がいい」という質素倹約思想で組つけたことがありますが、それはそれは、NOK製の動きを知っているだけにとても使えたモノではありませんでした。感覚として、スタビライザをねじまげて強引に取り付けているんじゃないのという感じですね。
Rev-3の前サスペンションからの、傷も何もないのに自然とオイルがにじんできたは、以上の理由からおあきらめ下さい。
クロヤマチューニングをした前サスペンションは、動く部分とオイルの流れる部分をストレスなしにする作業が大部分です。ですから、オイルシールは純正NOK(日本オイルシール工業)製ですし、油面もスタンダードと同じです。
ダンパー側は油面60ミリで、スプリング側は03Rev-3だと油面130ミリです。
<どこのオイルメーカーがいいの>
Rev-3前サスペンション用のオイルのお薦めは、日本製のカヤバ工業前サスペンション用オイルです。何故かというと、イタリアパイオリ社と日本カヤバ工業は技術提携をしている関係で、量産のサスペンションに使われているオイルは分かりませんが、こと試作のテスト段階で使うオイルはすべてカヤバ製を使っています。
Donato Miglio(ドナトミリオ)さんの工場で、黒山選手とかカベスタニーとかが前サスペンションのテストをする時、そのサスペンションに入れているオイルの缶には「カヤバ工業」と書いてあります。これは企業秘密でも何でもなくて、HRC藤波選手が使っている前サスペンションは日本製ショウワでして、当然使っているオイルはショウワでしょうし、他のメーカーのオイルなんか使うわけがないわね。
日本のサスペンション専門メーカーのカヤバもショウワもなかなか手に入らないのなら、その他のオイルメーカーが出している前サスペンション用オイルを使うことになりますが、この場合の選択基準として、以前に2サイクルオイルの選択の時に書いたんだけど「石油メーカーの出しているオイル」を使うことです。
オイルというモノはすべて、原油からガソリンを精製した時に出る残留物から作られています。石油メーカーは、このオイルの原材料をただで大量に手に入れることが出来ますから、当然、オイル販売コストも下げられるし、製作段階で湯水のように試作オイルを作ることが出来ます。ですから、ことオイルに関しては「石油メーカーの出しているオイルを使うこと」が結論です。
黒山選手のオイルスポンサーである「BP」には残念ながら前サスペンション用オイルはありません。どうぞ、他の石油メーカーの出している前サスペンション用オイルを捜してお使い下さいね。契約上、他のどのメーカーのがいいですよとは言えないことを理解してね。現在、世界中で石油メーカーの出しているオイルで一番優れているのは「BP」だけなのです。
<粘度は何番なの>
さて粘度ですが、各ライダーによってやり方がありますが、黒山選手の場合は、というよりもお父さんのやりまたとしては、ダンパー側は常に年中2.5番で、スプリング側を季節温度によって変更しています。
ダンパー側は常に年中2.5番という理由は、ダンパーには調整ノッチが必ず付いていますから、これをカチカチと動かして自分の好みのサスペンションの動きにします。そして、プロフェッショナルとなるとカチカチとどのくらい動かすとどのくらいのサスペンションの動きの渋さになるかと体で覚えています。例えば、全ユルから10ノッチ締め込むとどのくらいの渋さの動きになるとかです。
これの大前提は、中に入っているオイルの粘度が常に同じということです。全ユルから10ノッチ締め込みました。この場合、中に入っているオイルの粘度が違えば、同じ10ノッチ締め込みでも動きが全然違うことは民間人でも理解出来ますよね。だから、年中常に同じ番数粘度なのです。
夏と冬では同じ粘度のオイルでも、粘度が変わってくるのじゃないかとお思いでしょうが、でもこれは許容範囲内なのです。冬場、全ユルから10ノッチ締め込みを基準とすると、夏場は13ノッチ締め込みくらいでOKなのです。
それを夏場は粘度を5番とかに上げると、2.5番で覚えている体感感覚をまたいちからやり直さなくてはいけないからです。
<何故、一番やわらかい粘度の2.5番なのでしょうか。これにも理由があるのです>
ダンパー効果は、基本的に小さな穴にオイルを無理矢理通過させることにより発生させています。こうなると、誰が考えても小さな穴を素早く通過出来るのは、硬い粘度のオイルよりもやわらかい粘度のオイルの方です。
カチカチと動かす調整ノッチは、それを動かすことによって内部の穴の径を大きくしたり小さくしたりしています。Rev-3の前サスペンションのダンパー側の調整ノッチは、全ユルから33ノッチ締め込むことが出来ます。
やわらかいオイルは、その通過する穴の径が少しくらい小さくなったり大きくなったりしても、そうは通過速度と量は変わりません。でも、硬いオイルは穴の径の大きさが少しでも変わると通過するオイルの量と速度がすぐに極端に変わります。
やわらかいオイルだと、前後4ノッチくらいは回しても動きの渋さは少ししか変わりません。でも、硬いオイルだと極端に言うと1ノッチで動きが変わります。ということは、やわらかいオイルだと前後4ノッチの間の感覚は2ノッチで得ることが出来ますが、硬いオイルだと1ノッチの動きの真ん中がほしい場合、0.5ノッチはないのだからこれは我慢するしかなくなります。
だから、一番やわらかいオイルなのです。この事は後ろショックアブソーバーにも同じ事が言えます。ダンパーのオイルは、出来るだけやわらかいオイルを使う。そうすることによって動きを調整する範囲が、硬いオイルを使う時よりも広くなる。これが答えです。
ダンパー調整する機能の付いていない前サスペンションは、その中に入れるオイルの粘度硬さで調整セッティングします。何だかの理由で調整ネジは一切扱わないライダーもこれと同じく、中に入れるオイルの粘度硬さで調整セッティングしましょうね。