<Q>

こんにちは、教えてください。タイヤの交換を行うときタイヤ単体ではなく、新しいタイヤが組んであるホイルASSY毎交換すると早く交換できて便利だと思うのですが、この時はディスクロータだけは同じものを使わないと当たりが出ずにブレーキングに悪影響がでるように思うのですが、民間人レベルでは気にしなくても良いのでしょうか?

また、2001 rev-3ですが、ギアオイルが乳化したように白濁します。恐らく、冷却水がOリングを超えて混入したことが原因と思いますので、Oリングを交換しようと思っています。交換には特殊工具は必要でしょうか? 交換時のNOW HOWをお持ちであれば、惜しげもなく公開して頂けるとありがたいのですが...

<A>

# スペアホイルのこと

一生慣らし運転いち民間人ライダーの方で、スペアホイルを持っておられるとは素晴らしい心構えです。アンタは偉い、ですね。

練習中ならまだしも、大会中にパンクしてホイル交換するとなると、一番の問題は「ブレーキがすぐにカキンカキンに効いてくれるか」という問題です。経験上、後ろホイルの交換は、交換してすぐにブレーキが効かなくても問題ありません。水をかけてブレーキを強く踏んだり離したりを何度か繰り返すとすぐに効くようになります。

問題は前ホイルの交換で、前ブレーキはなかなかすぐにはカキンカキンには、あらゆる手段手はずを講じても効いてはくれません。これの解決方法はただ一つ、週いちでホイルを交換しながら練習をし、両方のホイルのブレーキディスク板を常に馴染ませておくことです。

神戸に輸入靴専門店の銀座堂という有名なお店があります。ここの社長の金岡長治さんは顧客へのアドバイスは2つだけ。

1. 汚れをしっかり落とす
2. 同じ靴を2日も3日も履き続けないこと

これで靴の傷みが全然違うそう。

このアドバイスはトライアルバイクにも当てはまり、1の汚れをしっかり落とすは「練習後は洗車をしっかりやる」ですね。2の同じ靴を2日も3日も履き続けないことは「スペアホイルを持っているのなら、同じホイルで毎回練習をしないこと」ですね。

黒山選手は、前後共に使えるホイルは常に3つあります。1つは自分のバイクに付いているホイル、2つ目は二郎君号のバイクに付いているホイル、3つ目はスペアとして置いているホイル。この3つのホイルを毎週順番に順送りで交換して練習しています。

こうすることにより、大会中にもしホイルごと交換しなくてはならないようなパンクでも、ホイル交換しても当たりが出ていて、すぐにカインカキンにブレーキが前後共に効いてくれる手はずなのですし、実際によく効きます。

いち民間人の姑息なもくろみとして、スペアホイルは新品のまま取っておいて、バイクを売る時に「新品スペアホイルあり」の売り文句をたくらみ売値を少しでもつり上げる作戦なら、月いちのホイル交換はおすすめしません。どうぞ、必死に人生のすべてをかけてブレーキを力一杯おかけ下さい、です。


# ギア室の白濁化のこと

このホームページの黒山レーシングのコーナーの水関係のところを開いてみると、以下の能書きが書いてあります

「ミッション室内への水漏れはオイルシールの不良でなく、ベアリングにガタが出てシャフトがぐらつきシャフトとオイルシールのその隙間から水が漏れ始めます。ですから、その不良部分を調べてのち以下の1) 2) 3) 4)のどの修理をするか決める必要があります。単純に水が漏れた→すぐにオイルシール交換では水漏れが止まらない場合が多いのです」

冷却水とミッション室とは、あなたが言うOリングではなくて、由緒正しいオイルシールを使って遮断しています。ミッション室はここだけではなくて、クランク軸、ドライブ軸、キック軸、チェンジ軸等々の各シャフトにもオイルシールで遮断して密閉し、オイルが外に漏れないようにしています。

でも、この水車を回すシャフトの所のオイルシールだけはすぐにいかれてしまい、冷却水がミッション室に入り込み、ギアオイルが牛乳のように白濁化してしまいます。この理由は簡単で

1) 冷却水が高温になりその温度上昇を抑えるために冷却水に圧力をかけるシステムなんだけど、その高温高圧の冷却水に立ち向かうには、その防衛隊なるオイルシール自身が小さくて弱すぎる。
2) 水車を回す細いシャフトにこのオイルシールは取り付いているんだけど、そのクルクル回るシャフトを支えている2個のベアリングも小さくて弱いから、このベアリングがけっこう早く痛んでガタが出てきくるの。
3) シャフトに取り付いているオイルシールの密閉機能の第一条件は、シャフトがグラグラ動かないことです。でも「2」のようにシャフトのベアリングにガタが出てシャフトがグラグラ動いて回転を始めると、いくら新品のオイルシールに交換しても、またすぐにミッション室は水が入ってきて白濁化します。
4) ようするに、この部分のオイルシール自身が小さすぎて密閉力が弱いのと、オイルシールが取り付いているシャフトも、そのシャフトベアリングが小さくて弱いためにガタが出てグラグラしてオイルシールの隙間から水が漏れる、の2点です。

コンパクトに作る宿命のトライアルバイクエンジンは、ルネッサンス時代レオナルドダビンチの末裔の血を引く伝統あるフローレンス工科大学大学院卒業生で固めるBetaMotorの設計陣の優秀な頭脳を持ってしても、この部分の強度不足はいかんともしがたく、対策方法はただ一つ、具合が悪くなったらその都度部品を交換するという、古今東西共通の極めて単純な対策方法。これしかありません。

<この部分の修理方法>

1) 冷却水を抜きます。バイクの右側を下にして横倒しにします。水車カバーの3本の4ミリボルトをはずします。
2) カバーをはずすと、黒いプラスチックで出来た水車が出てきますから、それを止めている小さなサークリップを広げてはずします。この時に、このサークリップをピチンっと飛ばしますと、経験上、人生のすべてをかけ汗だくになりながら捜してもまず見つかりません。作業中、ウエスを上からかけてはずしてやるか、スペアのサークリップを持っているとよろしい。
3) サークリップがはずれますと、黒い水車を2つのラジオペンチで上に均一に引っぱりはずします。一つのラジオペンチでこねるように交互に引っぱりはずしますと、この水車のプラスチックの硬さが弱いために、シャフトに取り付ける穴が開いてきて、再度取り付けた時に水車自体がグラグラとしか取り付かなくなります。
4) 水車をはずしますと、オイルシールとシャフトが出てきます。まず、シャフトをつまんでみてグラグラしていないかどうか確認します。少しでもグラグラしていましたら、それはシャフトの奥にある2個のベアリングを交換しなさいよという合図です。
5) シャフトがグラグラしていなかったら、アンタは運がよろしい。見えているオイルシールだけの交換ですみます。
6) オイルシールの交換は、文章で書くといとも簡単ですが、やるは熟練を要します。
7) このオイルシールはサイズが純正は「10-18-4」ですが、これはヨーロッパ規格でして日本のオイルシール規格にこのサイズはなくて「10-18-5 」はありますから、この幅というか厚さが1ミリ大きいサイズで実用上問題ありませんので、これをどこかから都合をつけます。
8) オイルシール交換は簡単です。シャフトに傷を付けないようにマイナスドライバーでこじって取り外し、新品にシリコングリースを塗り付けて 上から平行に、かつ均等に打ち込みます。私達本職の場合は、ここの部分専用のオイルシール由緒正しく打ち込み専用特殊工具を作っていますので、簡単にかつ正確に打ち込めます。
9) 参考までに、この部分のように回転軸のオイルシールにはシリコングリース、前サスペンションのように往復軸にはテフロングリースを使うのが由緒正しき方法です。すべてどこでもシリコングリース一本というメカニックを職業としている人がいたら、大根で頭を殴るかニンジンで太股を刺しましょう。
10) オイルシールをはずした時に、シャフトにガタがなくても、シャフトのオイルシールのリップ部分が当たる部分に溝が深く出来ていたら、これはシャフトも交換する必要があります。
11) オイルシールを打ち込む時に注意するのは、ここのところのオイルシールは通常の方向とはオイルシールを反対にして打ち込むということ。前サスペンションのオイルシールって、上から見てもゴムだけでオイルシールの内側にあるOリング状の巻きスプリングは見えませんよね。
12) この部分は、見えている部分、表の部分から冷却水の圧力がかかりますから、圧力がかかる方にオイルシールの巻きスプリング部分を持ってくる必要があります。ですから、普通に考えているのとはオイルシールを反対側に向けて打ち込みます。
13) 通常のオイルシール打ち込みと違って反対方向から打ち込みますから、当たる打ち込み部分が狭いので、専用特殊工具を使う方がよろしいのですが、なければ人生のすべてをかけて崖っぷちに立った気持ちに自分自身を追い込み、丁寧かつ注意深く打ち込むこと。
14) けしてアニマル浜口パパのように「京子、気合いだぁ!」で一気に打ち込んではいけません。
15) オイルシール交換が終わったら、黒い水車をつけてサークリップをはめます。このサークリップをはめる時も、ピチンっと飛ばさないことは肝要ですが、もし飛ばしてしまったら、細い針金でシャフトのサークリップ溝を巻いて応急処置とします。
16)あとは、アヒルの顔の形をしたゴムOリングを溝にキチンと合わせてフタをします。このゴムOリングを溝にはまっていないのに強くフタをして、そこから冷却水が噴き出すことはままあることで、ここのところも崖っぷちに立った気持ちに自分自身を追い込み、丁寧かつ注意深く3本の4ミリボルトを交互に締めること。

<シャフトの交換やベアリングの交換の手順はだいたいですが、以下の通り>

1) アンダーガードをはずすか、クラッチベースカバー部分のみゆるめてアンダーガードをずらす。
2) クラッチベースカバーをはずす。この部分のパッキンをけちって交換したくないのなら、アニマル浜口パパの「気合いだぁ」ではずさずに、丁寧にゆっくりはずしてきれいにパッキンを取る。
3) クラッチベースカバーの裏側に白い歯車が付いています。オイルシールのつている側のシャフトを叩いて、シャフトを白い歯車ごと抜きます。この時に、シャフトに2個のベアリングが付いたまま抜けてきたら、次に新品のベアリングを打ち込んでも、それはユルユルの穴にベアリングを打ち込んだのと同じですから、その場合はベアリングを接着剤で止める工作をします。
4) 普通はベアリング2個はクラッチベースカバーについたままですから、これをオイルシール側から叩いて打ち出します。
5) 新品ベアリング2個を打ち込みます。2個のベアリングのうちカバーの付いたベアリングの方を最初に奥に打ち込みます。その外側にベアリングだけのを打ち込みます。
6) その後に白い歯車を付けたシャフトを打ち込みます。そして、その後に反対側のシャフトにオイルシールを打ち込みます。
7) 何でもそうですが、オイルシールというものは余程の例外がない限り、作業の一番最後に打ち込みます。この場合、ベアリングを打ち込みました、オイルシールも打ち込みました、そして最後にシャフトを通しで打ち込みましたは間違いです。
8) その理由は以下の通り

a. オイルシールは基本的にシャフトを締めつけてオイル等の漏れを防ぐものです。ですから、オイルシールを取り付けてシャフトの動きを確認しても、これはけっこう始めから動きが渋いものです。だから、シャフト自体の取付が悪くて動きが悪いのか、オイルシールの締め付け力で動きが渋いのかの判断がつきにくいのです。
b. だから、オイルシールを取り付けずに、まずはシャフトを先に打ち込みシャフト単体での動きを確認します。動きが悪ければ、ベアリングの打ち込み方が悪いのか、新品ベアリング自体の不良かの判断が付きます。そして、その後にオイルシールを打ち込みます。
c. 次にもうひとつの理由、指輪を指にはめる場合を想像しましょう。
d. 指輪を固定しておいて指を差し込み動かしてはめる場合、シャフトというか指をこねくり回して指を押し込んでいきます。これは強引な方法です。
e. 指を立ててジッとしておいて、反対の手で指輪を動かしながら下げていく方法は、何も言わなくても誰でもこの方法をとって指輪をはめます。これも理由は簡単で、本能的にこの方法が指にも指輪にも無理がない方法ということを体が知っているからです。それは指には「痛みセンサー」というものが付いていますから、どちらの方法が指の痛みセンサーの指針の振れが少ないかを体が知っているのです。
f. 指をシャフト、指輪をオイルシールに置き換えて考えてみると結論が出ますよね。シャフトには「痛みセンサー」が付いていませんから分からないだけで、打ち込んであるオイルシールに後からシャフトを差し込むのは無理が大きいのです。すでに打ち込んであるシャフトにオイルシールを打ち込むのは、指輪のはめ方と同じで無理が少ないのです。

9) オイルシールを打ち込みますと、あとの作業はオイルシール交換作業の始めに書いたのと同じです。

以上、頑張ってオイルシール/シャフト/ベアリング交換に励んでくださいね。