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‘02Rev-3に載っている者です。今回はフライホイールの取り付けについて質問があり筆(キーボード?)を取りました。

さて、過去のQ&Aで'99テクノの点火時期調整に関する「正しい点火時期の合わせ方」についての記載がありましたが、別のQ&Aでは「半月キーは点火時期の位置決め」との記載もあります。
半月キー基準でフライホイールとイグニッションプレートを組み込むだけでは、正しい点火時期にはならないのでしょうか?
確かに部品には必ず嵌め合い公差がありますので、キーの嵌め合いガタの影響はあると思いますが、それはどの程度(全日本選手権IBレベルで影響が考えられる程度)の物でしょうか?
お忙しいとは思いますが、ご回答の程宜しくお願い致します。

<A>

 フライホイルの奥にある円形のステーターコイルの位置を動かして、点火時期を調整位置合わせするという方法は、原始的な方法です。でも、この方法が誰にでも位置合わせが出来て簡単かつ確実な方法です。あげくに製作コストも安いという利点があります。

 確か、ホンダのRTL250は点火時期の調整は出来なかったような気がしますが、どうでしょう。藤波選手のワークスバイクの点火時期は、CDIにつながったカプラーを何個も持っていて、それをはめ変えて交換することで簡単に点火時期を変更していました。
 標高の高いアンドラ大会で、点火時期を進めてパワーの出方を変えようとしました。Rev-3は当然

1) フライホイルをはずす
2) 中のステーターコイルの3本のネジをゆるめて、ステーターコイル本体を左に動かす
3) フライホイルを取り付ける

 の仕事をしないといけません。この仕事を練習セクションの脇でやっているところを、藤波選手のお父さんに見られて「スタンダードは変更出来ないけど、うちはこのカプラーを付け替えるだけで点火時期は変更できるよ」と言われた記憶があります。

<確かに部品には必ず嵌め合い公差がありますので、キーの嵌め合いガタの影響はあると思います>  これは、フライホイルの締めつけナットを締めていない時はそうかもしれませんが、規定のトルクでナットを締めつけると、これはないでしょうね。ただし、この事はクランクシャフトの半月キーを入れるキー溝が正しい状態と、半月キーが新品の状態と、フライホイルの半月キーを入れるキー溝が正しい状態での話しです。

 まったくの新車の状態から、一度もフライホイルをはずした事がない場合は、BetaMotorでエンジンを組み上げる時に設定した点火時期は狂いません。BetaMotorは、エンジン組み上げの最終段階で必ずダイヤルゲージをプラグ穴に取り付けて測定して位置決めしています。

 ついでに言うと、クランクケースにベアリングを入れる時は左右のクランクケースを大きな工業用のオーブンに入れて温め、ベアリング打ち込み穴を膨張させ広げ「ストン!」ってベアリングのすべてをストレスなしで入れています。

 エンジン組み立てラインの始点から終わりまで、二郎君と根掘り葉堀り執ようなまでに実況検分しているから知っているのです。

 で、にわかメカニックのいち民間人皆様が点火時期を変更してみようと、フライホイルをはずしてまた取り付けての作業をやりますと、必ず、小さな半月キーが変形したり肉やせしたりして半月キー自体にガタが出てきます。この小さな半月キーは焼きが入っておらずに、ごく普通の小さな鉄ですからクランクケースのキー溝に入れる時にハンマーなんかで叩いて入れるとすぐに変形します。

 何でこの半月キーに焼きを入れて強くしていないかというと、クランクシャフトには焼きが入れてあってものすごく硬い材質ですが、硬いモノと硬いモノをきちきちに打ち込むと金属接触熱焼き付きを起こしてかじりついてしまい、もう2度ととれなくなってしまうからです。

 これはたいていの金属は何でもそうで、硬質ステンレスやチタンは締めつけ過ぎるとその締めつけ熱で焼き付いてしまい、2度とはずれなくなります。これは硬いアルミもそうで、だからアルミのナットはアルマイト加工してその事を防止しています。

 ステンレスやチタンのボルトには、同じ材質のナットを使わずに素鉄かクロモリのナットをお使い下さいね。

 またまたついでに言うと、BetaのテクノであれRev-3であれ、キックを止めているボルトはごく普通のボルトを必ず使うことです。キックシャフトは焼きの入った硬い硬い鋼鉄です。で、ここのネジ穴にこれまた硬いステンレスやチタンのボルトを使うと、ヘタをするとかじりついてしまい2度とはずれなくなることがあります。ご注意のほどを!これはグリスを塗って締め込んでも同じです。

 話しがそれてしまいましたが、何度も使った半月キーは正しいキー溝より少し細くなっているというか、すこし原型より変形つぶれています。で、それを使って正しく位置決めしてフライホイルナットを締めつけても、エンジンをかけると必ず決めた位置よりも戻る方向にフライホイルが少し動いてしまいます。これはわずかですが、点火時期を戻した状態になり「点火時期を早くしたつもりなのに全然パワーは変わらない」になるのです。

 ましてや、半月キーが飛んだ経験のあるクランクシャフトとフライホイルのキー溝は見れば一目瞭然、キー溝が広がっています。この広がったキー溝と変形した半月キーを使っていくら正しく点火時期を合わせても、組み付けてエンジンをかけると、あなたが言うようにはめ合いのガタがありますから「必ず、点火時期を戻した方向に動いて」しまい、正しい希望する点火時期にはなっていないのです。

 フライホイルをはずして半月キーをもはずしたら、100円の半月キーは消耗品だと考え必ず交換してくださいね。

 点火時期について少しだけウンチクを

1) 点火時期はピックアップが良くなるだけ

 点火時期を上げるとピックアップが良くなります。これをパワーが出たと勘違いして、すべての回転域でのパワーが出たと考えるのは間違いです。黒山選手の元のメカニックのイバノォーに「パワーがない」と言うと「上か下か真ん中か」と聞かれます。で「下だ」と言うと、まず一番にやることは点火時期を早くすることです。

 何度も点火時期を早くしたり遅くしたりして経験をつむと、どのくらい動かしたらどのくらいピックアップが良くなったり悪くなったりは、良いテストライダーがいればじき分かるようになります。自分でやって自分でテストしたんでは「点火時期を早くしたからピックアップが良くなっているはずだ!はずだ!」という先入観思いこみで始めからテストしていますから、これはダメ。

 現実問題として、フライホイルの中のステーターコイルをだいたいで約1ミリ近く動かさないと、皆さんの使い込んだ反応の鈍いバイクではその違いは体感出来ません。それを、ほんの気持ち、動いたか動かないか分からないくらいステーターコイルを左に動かし「これで確実に点火時期は早くなっているはずだ」のレベルの動かし方では、エンジンの性能は変わりませんね。
 もし変わったと思ったら、始めのお言葉「変わっているはずだの先入観」でそう思っているだけです。

 黒山選手の研ぎ澄まされたエンジンでも、動かす最低基準は約0.5ミリ単位です。これ以下の動かしでは、黒山選手は「何にも変らん」と必ず言います。

2) 点火時期を早くすると回転が上がらなくなる

 ロードやモトクロスのように高回転型のエンジンの点火時期は、とても遅く設定しています。理由は、エンジンというモノは、ピストンが上に上がって来て圧縮を高めてからプラグに火を飛ばすんですが、実際問題として、一番上の上死点までピストンが来てから火を飛ばしたんでは遅すぎて、少しだけは上死点よりも早くにプラグに火を飛ばす設定にしています。

 これがまだかなりピストンが上に上がりきらないうちに、規定よりも早くに爆発させてしまうと、誰が考えてもエンジンに良くないですね。

 上死点前で早くに爆発させるということは、上がってくるピストンを押し戻そうとしているわけで、あんまり早くに点火時期をしてしまうと、ある一定の回転以上はピストンを押し戻す力の方が、回転しようとする慣性の力よりも勝ってしまい、上の回転が上がらなくなります。

 点火時期を早めると、下のピックアップは良くなる変わりに、上が回らなくなることを基本知識として覚えておいてくださいね。

 これは二次圧縮もそう、ヘッドガスケットを薄くして二次圧縮を上げると確かにパワーは出ます。でも、回転が上がらなくなることを知っていて下さい。

 プラグコードをはずします。そしてキックします。ピストンは何度か上下して止まります。今度はプラグをはずして圧縮を抜いた状態でキックしてみます。ピストンは抵抗なくスコスコとプラグを付けた状態の5倍以上は回転します。

 ロードやモトクロスの二次圧縮は、とても低いのです。でも、ロードやモトクロスのバイクをキックしたことのある人は経験で知っていると思いますが、キックが重くてケッチンも凄いのです。これでいち民間人は、すごい圧縮やなとお思いでしょうが、これは単純にフライホイルが軽いか、ないのと同じだからそうなるのです。

 トライアルバイクもフライホイルのない状態でキックをしてみましょう。モトクロスバイクと同じキックになりますよ。トライアルバイクの一番の特徴は、巨大なフライホイルにあるのです。

 これで分かるとおり、二次圧縮が高ければピストンの上下はしにくくなり、低ければピストンが上下しやすいのです。お料理も塩とコショウを入れると入れただけ美味しいわけではありません。何でも限度適量というモノがあります。点火時期や二次圧縮もこれと同じで、適度というものがありますから、よぉ〜く勉強して下さいね。