【Q】サイレンサーが内側に寄ってしまって、タイヤに擦れて穴があきそうになります
私、現在Rev3(03)に乗っていますがよく転倒させます(^^;)。
その転倒で、でしょうか?サイレンサーが内側に寄った状態になり、リアタイヤと擦れ、このままではサイレンサーを破るのは時間の問題です。以前、テクノに乗っていたときもサイレンサーを破り、継ぎあて、また破り、を繰り返していました(;;)。Rev3師匠もサイレンサーを接ぎ充てています。(師匠の防震ゴムは切れていませんでしたが)コレは、サブフレームの歪みからくるものなのでしょうか?何かお金のあまりかからない対処法はありますでしょうか?
<A>
その昔、SSDTに出場いたしました現エトスデザイン社長の近藤博志さんが、自分で作ったオールアルミフレームの「エイリアン」で出場し、私のあやふやな記憶ではアルミサイレンサーの内側が後ろタイヤでこすれて、野球ボールが入るくらいの穴があいてしまいリタイアしたそうです。
のように、このサイレンサーの内側と後ろタイヤがこすれて、サイレンサーに穴があく事は、昔も今も悩みの尽きない事ですね。原因は単純で、転んでサイレンサーを外側から押しつけるからです。そうすると
1. サイレンサーをつり下げているアルミのステー自身が内側に曲がる。
2. そのつり下げているステーを、ボルトナットで締めつけている相手のサブフレーム側のステー自身も内側に曲がってくる。になります。だったらその内側に曲がった2つのステーを外側に引っ張り出し元の状態に戻せばいいのです。でもでも、形状記憶合金以外の金属は、無理矢理何回も動かすと「金属疲労」というものがあって最後にはフニャフニャになってしまい、もう外に引っ張り出しても手を離すと元の内側にダランと戻ってしまいます
・対策の1
サブフレームとサイレンサーのお互いのステーの間に、厚めのワッシャを入れてサイレンサー自身を外側に位置するようにしてやる。
でもこれは、サイレンサーのステーの強度がまだあるうちはいいけど、このステーの強度が金属疲労で弱くなってくると、取り付け位置はいくら外側に行っても、重いサイレンサーはやっぱりステーが弱っているから内側にたれて元の木阿弥になります。
・対策の2
後ろタイヤとこすれて破れそうになっている部分に、封筒みたいな形に切ったアルミ板をパンク修理の「当てパッチ」みたいにアルゴン溶接をする。
でもこれは、こすれないようにする解決方法でなくて、こすれている部分を取り替えるだけの修理でして、またいずれ穴があいてしまいます。
金属疲労で弱くなったサイレンサーの、ステーそのものを新品と取り替える。これが一番いい解決方法です。でもこれは、その「新品と取り替える」アルミの材料が問題で、そのへんの日曜大工の店で売っているアルミは、どれも溶接するとフニャフニャになってしまいますから全然ダメ。
一番ベストはアルミ品番的にいうと「A5083」でして、神戸製鋼の能書きでは以下の通り。
<硬さは汎用のアルミ合金(A6063,A5052)を一段上まわり、軽負荷であればタップ加工後のヘリサート不要。「とくに溶接性にすぐれ」、耐食性、強度とも良く、軟らかすぎないので切削加工したさいの寸法精度も良い。成形性はA5052に劣る>
経験上、色々なアルミ材料をテストしましたが、フレームやスイングアームの材料のスーパーアルミ「A7N01」は硬すぎて、溶接した部分から折れてしまってダメ。これを業界用語で「2番から折れる」と言います。
そんなアルミ材料はここにはないよというのなら、どうぞその辺に転がっている適当なアルミ材料でステーを作って溶接してもらってください。でもでも、その場しのぎと思ってやってもらってくださいね。
ちなみにアンダーガードだったら強いから、使い古し交換して要らなくなったその端っこを切ってステーの形にして溶接したらいいのと違うとお思いでしょうが、これはとんでもないことなのです。多くのアンダーガードの材質は「A2017」と言いまして、神戸製鋼の能書きでは以下の通り。
<ジュラルミンの代表格。コストパフォーマンスが非常に高い。鉄鋼材;SS400にほぼ匹敵する硬さ(引張り強さと同義)で、一般的なアルミと異なりタップ加工後のヘリサートも不要、工作機械での削りやすさも群を抜く反面「溶接不適」、他のアルミよりちと腐食しやすいなどの落とし穴もあり>
という訳で、アンダーガードは溶接すると強度がなくなるアルミ材料です。だからこそ、この事を知っている賢明なトライアルショップが出しているオリジナルアンダーガードは、ウォータポンプなんかをカバーする「サイドカバー」はアンダーガード本体に直接溶接すればいいものを、わざわざ別作りでボルト止めにしているのはこの為です。
その昔に、この事を知らない賢明でないトライアルショップが、サイドカバーをアンダーガード本体の左右に溶接したオリジナルアンダーガードを売りに出していましたよね。今もあるかもしれません。天地神明に誓い、裁判訴訟になってもブッチギリで勝訴の自信を持って断言できます。アンダーガードを溶接すると、極端に強度が落ちてしまい、その弱くなった強度は一生そのままです。
ハンドルもそう。昔のハンドルは鉄製だったけど、今の世の中、トライアルで鉄のハンドルを使っている人なんていないよね。皆さんアルミ、つまり軽合金です。ハンドルの軽合金は、アンダーガードと同じ材質と考えてもらってかまいません。
で、MFJ国内競技規則には、モトクロス基本仕様規則 3-5-7 、トライアル基本仕様規則3-6-5のハンドルバーの規制のところにこう書いてあります。
<軽合金ハンドルバーの溶接による補修は禁止される>
つまり、溶接すると弱くなるって事です。
私もそうだったけど、溶接は「鉄の溶接」の事しか知りません。すべてがそうとは言わないけど、私達が人生で遭遇する普通の鉄の溶接は、溶接してくっつけてもその強度は落ちずに、溶接前と同じ強度が鉄です。でも、アルミは違うのです。
・アルミのフレームやスイングアームは溶接しても強度は一時的に落ちますが、時間がたつと強度は元に戻り回復します。
・アルミのサイレンサーやチャンバーやそのステーは、ある程度はフラフラしてくれないと困ります。強度がありすぎると、ヒビが入ってちぎれてしまいます。こういう.アルミ材料は、溶接が可能です。
・アンダーガードやアルミのキックシャフトや前サスペンションのアウターチューブやサブフレームは、溶接は可能ですが、実用使用強度に耐えられないくらいに強度が落ちます。もう元の強度には戻りません。だから、これらの製品でスタンダードから溶接して製作した製品はありませんよね。あなたのご質問のサイレンサーですが、その新品に交換するアルミステーの材料の質を見極めて、溶接してもらってくださいね。
<何かお金のあまりかからない対処法はありますでしょうか?>
あります。この答えは簡単明瞭で「日頃から、アルゴン溶接機を持っている馴染みのトライアルショップと仲良くしておいて、こういう作業代をナーナーアヤフヤにしてもらい、タダかそれに近い値段でやってもらえる人間関係を常日頃の努力で作っておくこと」です。ただし、この場合の溶接技術仕上げには目をつぶりましょうね。