<Gas-Gasオーナーに告ぐ!> 1.4stと2stのエンジンオイルの違い。 当たり前ですが、エンジンはオイルをやらないと壊れてしまいます。 ところが2stエンジンには2種類のオイルが必要です。ひとつはガソリンの中に混ぜて使う混合用オイルと、ミッション室に入れるいわゆるギア用オイルの2種類です。混合用オイルは、シリンダーの中を上下するピストンの潤滑と、上下するピストンの往復運動を回転運動に変換させるコンロッド大腿部のベアリングの潤滑と、クルクル回る重い大きいクランク軸左右ベアリングです。もう一つは、ミッション室用の歯車ギアオイルです。 2.混合用オイルとミッション室オイルの違い。 ガソリンの中に入れる混合用オイルは、常に新鮮で高級なオイルが必要な部分用です。パチンコ玉球を転がすのと、金属平板を滑らせるのを考えると、どっちの方にオイルがたくさん必要かが分かります。シリンダーの中を上下するピストンは、金属と金属が面で擦れあうまさに金属平板が滑っている状態ですので、常に新鮮かつ高級オイルが必要です。 それと上下するピストンの往復運動を回転運動に変換させるコンロッド大腿部のベアリングや、クランク軸左右ベアリングも、パチンコ玉球を転がすのと同じですが、この2つのベアリングはミッション室のベアリングと違って高回転のうえに相当の負荷がかかっていますから、やはり常に新鮮かつ高級オイルが必要です。 ということで、シリンダー内部とコンロッド大腿部のベアリングとクランク軸左右ベアリングの潤滑は、ガソリンの中に混ぜた新鮮オイルをぶっかけて潤滑し、次に、オイルごとガソリンを爆発させて排気管から出してしまいます。これの繰り返しですね。だから、常に新鮮なオイルが供給できているわけ。 ベアリングとギア歯車だらけのミッション室のギアオイルにも、当然のように高級オイルの方がいいのですが、ミッション室には湿式クラッチというのがありまして、この湿式クラッチには鉱物油という、分かりやすくいうと安物のオイルの方がつながりや切れがいいのです。それと、ミッション室のベアリングはコンロッド大腿部のベアリングやクランク軸左右ベアリングと違って、かなり減速されていますので回転も低いから鉱物油という安物のオイルで十分なのです。 ようするに、ガソリン混合用オイルは100%化学合成油の高級オイルを、ミッション室には鉱物油の安物オイルをというのが結論です。 3.Gas-Gasのエンジンはちと潤滑方法が違うのです。 長らくBetaだけの2stのみをいじっていた黒山レーシングレーサー整備室ですが、黒山選手がトライアル世界選手権を終了したのを機に、2st4stのヤマハエンジン、国際A級白神選手のシェルコ2stに手を広げ、国際A級スーパークラス坂田選手のGas-Gasを参考にして、ついにGas-Gasにまで手を染めてしまったという次第。 はっきり申し上げてお父さんがこれまでに経験した2stエンジンの内部構造は皆同じです。SUZUKIもYAMAHAもBetaもシェルコも基本的に同じです。シェルコなんてBetaのパクリとはいいませんが、ピストンもピストンリングもクランクベアリングもドライブ軸ベアリングもカウンター軸ベアリングもフライホイルの半月キーまでも同じです、というよりBetaのをそのまま使っています。 だからこれらのメーカーエンジンは、基本的にエンジン内部構造は同じです。 どっこい、バラしてみるとGas-GasのPROシリーズはまったく別物でして、これを作ったスペイン人のパチャウさんの頭の中はどうなってるのか開けてみたいくらい。他の部分はさておき、今回は、ことエンジンの中のオイルの話だけに絞ります。 Gas-Gasの場合、ガソリンの中に混ぜている新鮮な混合用オイルは、シリンダーの中を上下するピストンの潤滑と、往復運動を回転運動に変換させるコンロッド大腿部のベアリングの2つの潤滑のみです。クランク軸左右ベアリングの潤滑はしていないのです。ではなんで潤滑しているのかというと、安物のミッション室オイルをぶっかけるか垂れ流して潤滑しているのです。 普通の2stエンジンは、真ん中にコンロッド大腿部のベアリングがありまして、その両側に重い鉄のクランクがありまして、そのまた両側左右にクランク軸ベアリングがあり、そしてその左右両側にオイルシールで気密しています。ようするに気密されたクランク室の中に、コンロッド大腿部のベアリングとクランク軸左右のベアリングを閉じこめてガソリンに混ぜた混合オイルで潤滑しているわけ。 ところが、Gas-GasPROは、真ん中にコンロッド大腿部のベアリングがありまして、その両側にクランクがありまして、すぐに左右両側にオイルシールで気密しています。クランク軸左右ベアリングはクランク室の外に放り出しています。実はコンパクトに設計せざるを得ないトライアルエンジンの場合、これがあんがい正解なのかもしれませんし、その確かな理由もあるのですが、何故、こういうシステムにしたのかはここでは論じません。 左側のクランク軸ベアリングはミッションオイルをおでんの串くらいの細いバイパス穴を通過させて、ベアリングの左側空間へ垂れ流して潤滑しています。ベアリングの中を潤滑したオイルは、ベアリング外周に開いている一つの小さな穴から、またミッション室へ垂れ流すというか戻ります。 右側は、ギアでかき混ぜたオイルを外からぶっかけて潤滑する、単純なぶっかけ潤滑です。 右側はクラッチ室ですので、けっこうミッションオイルはかき混ざります。だから、右側クランク軸ベアリングの潤滑は問題あの部分にオイル溜めというか、少しの空間を作り、そこへかき混ぜ吹き上がったオイルを溜めます。そのオイルがおでんの串くらいの穴径の角度の付けてあるバイパスを通り、打ち込んであるベアリングの左側空間部分に垂れ流れ出てきます。
普通はベアリングの外周に穴なんて開いたのはありませんが、Gas-Gas特注のベアリングは外周に一つ穴が開いています。オイル溜めにたまったオイルは、角度のついたおでんの串の穴径のバイパスを垂れ流れ、そのベアリングの左側空間からベアリングの球に流れます。ベアリングの中を潤滑したオイルは、今度はベアリングの下にある小さな穴から、排出用バイパス穴を通り再びミッション室に垂れ流しで戻ります。 ここで誰でも考えるのは、排出用バイパス穴とベアリング外周の穴がピッタシに合っていないと具合が悪いということですね。これはばらし組みする技術者側の注意力の問題で、ベアリングとクランクケース側に合わせポンチマークが打ってありますので、注意してポンチマークを合わせ組めば間違いなく位置合わせは出来ます。
クランク軸左右ベアリングは回転も速く負荷も大きいので、新鮮で高級オイルが必要です。ところが、Gas-GasPROはこのクランク軸左右ベアリングの潤滑は、安物のミッションオイルで潤滑する構造。安物の鉱物油はクラッチの性能には抜群なのですが、潤滑性能は一番最低レベルと考えてください。対策としては -クラッチの切れつながりを無視して、高級ミッションオイルか高級2輪用4st用エンジンオイルを使う。 ですが、これでは解決にならないのです。 ミッションオイルはいくら高級100%化学合成油を使ってもすぐに汚れます。それは湿式クラッチ構造にありまして、単純に考えてクラッチ操作でクラッチフリクション板のコルクや紙がはがれるというか摩耗してきれいなミッションオイルに混ざりすぐに汚くなるのです。 それとオイルは古くなると粘度が増します。これもクラッチフリクション板のコルクや紙がはがれるというか摩耗して、オイルに混ざるのが原因です。ようは、さらさらのオイルが古くなると片栗のようにねっちょりになると考えてください。こうなった古オイルは、細いバイパス穴を流れやすいでしょうか流れにくいでしょうか。そして、そうなったオイルは回転も速く負荷も大きいクランク軸左右ベアリングにいいのでしょうか。答えは簡単です。 ⇒ シルクの高級パンツを一週間はき続けるよりも、100均パンツを毎日はき替えた方が気持ちがいい。 これと同じで、国際A級スーパークラス坂田選手がやっているように、 モチュール2サイクルミッションオイル を2回乗ったら交換する方法です。一生慣らし運転のいち民間人の皆様は、4回乗ったら交換するのがベスト。Gas-Gasのミッションオイル量は400ccですから、一回の交換オイル代は定価で買ったとして480円です。 YAMAHA契約黒山選手のスポンサーにモチュールはついています。でも、黒山レーシングにはオイルのスポンサーはついていません。ですから、ここでモチュールの宣伝をする必要はなくて、ガソリンメーカーの販売する2サイクルエンジンミッション室専用オイルなら何でもOKです。 重ねて申し上げます。2サイクルミッション室に、4サイクルエンジンオイルを入れる馬鹿だけはおやめ下さい。高級な4サイクルエンジンオイルほど、ピストンリングやベアリングやギア歯車の金属摩耗を防止するために、滑り添加剤がたくさん入っています。滑り添加剤が、滑ってはならない湿式クラッチにいいはずがなくて、事実、滑ります。 その証拠に、2輪用4サイクルエンジンオイルならまだ我慢して使える範囲ですが、湿式クラッチにまったく対応していない、4輪用4サイクルエンジンオイルをミッション室に入れて走ってみましょう。気持ちがいいほど、クラッチが滑るのを体感できます。 ひょんな事から、ガスガスPROシリーズのエンジンを2週間で5回全バラ組み立てして、分かったアドバイスがこれ。まだまだ、たくさん知られざるGas-Gasのノウハウがあるから続編をこうご期待! 以上、Gas-Gasオーナーの皆様にお教えいたします。ではでは〜〜 |