<クランクケースにあるブリーザパイプ穴の事>

これは、TY-S125Fのクランクケース上部につけてある(あいている)、スタンダードのブリーザパイプ穴です。内径は約8ミリです。

これは、BetaRev-3の2stのクランクケース上部につけてある(あいている)、スタンダードのブリーザパイプ穴です。 内径は約3ミリです。

この大きな穴径の差は、4stがクランクケース内部にたまる内圧を抜くのが目的なのに対して、2stは内圧がたまりませんので極端に言えばブリーザパイプ穴は必要ありません。でも、ギアとかクラッチとかが内部で回転し熱がたまり空気が膨張するので、小さな穴でいいですから、単純に外気とつながっていればOKという次第。

シリンダーの中のピストンは、当たり前ですが上下しています。当然、 上にあがる時は上側の空間が圧縮され、下側に降りる時は下側の空間が圧縮されます。2stはピストンが下に降りる時の下側空間の圧縮を利用して、掃気通路を利用し、混合ガソリンをピストン上部に送り込むシステム。

ですから、2stのクランクケース内部は「ピストンの下のクランク室と、ギアやクラッチ室とは分離」されています。ということで、2stのギアやクラッチのある空間部屋には、圧縮はかかりません。

ところが4stはピストンの上側の空間しか「吸気・圧縮・爆発・排気」に使わないシステム。そして、ピストンの下側とギアやクラッチのある部分は、ひとつの空間部屋になっておりつながっているのです。

ピストンの上側の空間にたまった圧縮は、爆発後、排気口から外に逃がします。では、ピストンの下側にたまった圧縮はどこへ逃がすのでしょうか。そう、それがブリーザパイプ穴なのです。当然、ピストンが上にあがる時は負圧がかかりますので、今度はこのブリーザパイプ穴から外気を吸い込みます。

エンジンをかけて、4stのブリーザパイプ穴についているブリーザホースの出口に指先を当ててみましょう。ペコペコ吸ったりはいたりしているのが確認出来ます。2stは、何の反応もないですね。

4stエンジンが中回転くらいまでは、このブリーザパイプ穴からの吸ったりはいたりはスタンダードの穴径の大きさで、まだまかなえます。でもこれが連続全開高回転になると、スタンダードの穴径では吸ったりはいたりが追いつかなくなり、圧縮された内圧が全部出ていかないうちに、次の圧縮がきてしまい、出て行く量よりもたまる方が勝つのです。つまり、クランクケース内部が高圧になってしまいます。

反対の現象も、もちろん起きています。ピストンが上に上がる時には、当然、ブリーザパイプ穴から外気を吸いますが、穴径が小さく吸い込み量が少ないとクランクケース内部は負圧になって、ピストンを下から吸ってピストンが上に上がろうとするのを引っぱる現象が起きます。

注射器を考えてみましょう。注射器の押す部分を持って、前後に早く押したり引っぱったりします。注射針を差し込む部分の穴径が小さいので、押す時も引く時も、空気の抵抗があってスムーズにはいきませんよね。

でも、この注射針を差し込む穴部分を、例えばなくして先が筒空間だけの注射器にしたとします。誰が考えても、押す部分を持って前後に押したり引っぱったりはスコスコになりますよね。

ということで、4stエンジンのクランクケース内部は高回転になればなるほど、ピストンが下に下がる時は圧縮圧で下げさせまいとし、ピストンが上に上がる時は負圧圧で上に上がらせまいとする力がかかるのです。

これの解決方法は、ブリーザパイプ穴の穴径を大きくするか、ブリーザパイプ穴を何カ所もつけるかですね。では何故、メーカーは最初から大きな穴径のブリーザパイプ穴にしないのでしょうか。これは以下が考えられます。

-TY-S125Fでトライアルするような、全開全開また全開のアクセルの開け方、エンジンの回し方は想定してブリーザパイプ穴径を設計していない。

-ましてや、この125エンジンは汎用、つまり、何にでも使える耐久性のあるのが目的のエンジン設計です。

-最後にも書いていますが、ブリーザパイプ穴径を大きくしますと、ミッション室内で暴れているエンジンオイルが噴き出してしまう可能性があるので、ある程度以上は穴径を大きく出来ない。

これはモンキー50のシリンダーヘッドについているタペット調整用の穴に、あと付けで追加のブリーザパイプ穴をつけています。また黒山選手のTY-S250Fは高回転タイプのDOHCエンジンだから、シリンダーヘッドから二カ所、クランクケースから一カ所の合計三カ所のブリーザーホースで内圧を抜いています。

という能書きのもと、TY-S125Fのエンジンをバラしたついでにブリーザパイプ穴をスタンダードよりももっと大きな穴にしてやろうという作戦です。結果先に書きますと、自画自賛ではありませんが「高回転に力強さが出た」のと「回転のあがりに無理がなく上がる」ようになりました。

つぶれたドレンボルトの時と違って、センター穴が最初からあいていますのでボール盤にドリルを取付けて、まずはスタンダードのブリーザパイプ穴パイプを削り取ります。

次にスタンダードのブリーザパイプ穴パイプ径のドリルで、ブリーザパイプ自体を消滅させます。写真は元々のブリーザパイプが埋め込まれていた穴です。

このスタンダード穴径よりも大きなドリルで、大きなブリーザパイプを打ち込む穴をさらに開けます。これで新しい大きなブリーザパイプそのものを打ち込む穴は完成です。

新しい大きな穴径のブリーザパイプを旋盤で作ります。このパイプ材料は、レンサルハンドルの直線部分で、内径は12.1ミリです。

完成した4st125用ブリーザパイプ本体と、BetaRev-3/250の2stのブリーザパイプ穴径を見比べて下さい。2stのは3ミリで、TY-S125Fのスタンダードのは8ミリで、新作ブリーザパイプのは12.1ミリです。

すみません、取付けた写真を撮るのを忘れました。左側の黒いカムチェーンスライダーの向こうに光っているアルミパイプが新作ブリーザパイプです。

完成し、TY-S250F用のブリーザホースを取付けた状態ですが、この状態から実際はホースを斜め上にあげていますので、穴径とホース内径は同じです。

ブリーザパイプを大きくしますと、当然、ブリーザホースも大きな内径のものになります。大きな穴になると、クランクケース内部でオイルは暴れていますので、当然、ホースの先っぽからオイルが吹き出します。

モトクロスは知りませんが、ロードはこのホースの先っぽからオイルが吹き出して、コースにオイルをまき散らしてはいけませんので「オイルキャッチタンク」を先っぽに取付ける事が義務ずけられていますね。モトクロスもそうなっているのかもしれません。

黒山選手のエンジンのメインブリーザホースは、アンダーガードの上に出口があります。やっぱり、出口周辺はオイルで汚れています。将来的には、トライアルでも4stはオイルキャッチタンクをつける必要があるかもしれませんね。

ちなみにHONDA.RTLの4stは、4stのくせに2stと同じようにクランクケースの中でクルクル回るクランク室と、ギアやクラッチのある部屋が仕切られて別れています。だから、HONDAはクランクケースに入れるオイルは「エンジンオイルとギアオイル」の2種類のオイルですね。当然、ブリーザパイプも2カ所から出ています。

今回やりましたブリーザパイプの穴径大きくのチューニングアップ、これをするだけで確実にアクセル全開時の力強さが民間人でも体感出来ます。クランクケースをばらさないと無理ですが、オーバーホールかなにかの機会にぜひやって下さいね。